東京アカデミー立川教室
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こんにちは。公務員試験の予備校=東京アカデミー立川校の福島です。
先週から金木犀の香りが和ませてくれていましたが、台風14号の影響と思われる今日の雨で終わりになってしまうのでしょうか・・・。
さて、今日の1問です!
No.12 参政権に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア.憲法第15条の規定は、国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない在外国民の選挙権を保障するものではないから、在外国民に衆参両議院の比例代表選出議員の選挙についてだけ投票を認め、衆議院小選挙区及び参議院選挙区選出議員の選挙については投票を認めないこととしても、違憲ということはできない。
イ.憲法は、国会の両議院の議員を選挙する制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、憲法上、選挙制度の基準となるものではなく、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものと解さなければならない。
ウ.政治上の表現の自由は民主政治の根幹を成すものであって、政見放送の事前抑制は認められないから、政見放送において、その使用が社会的に許容されないことが広く認識されているいわゆる差別用語を使用した部分が公職選挙法規定に違反するとして、当該部分の音声を削除して放送することは、憲法第21条に違反する。
エ.戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするのではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害を防止して、選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ、その目的は正当であり、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間には合理的な関連性がある。また、選挙の自由と公正の確保という戸別訪問の禁止によって得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きいといえるから、戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法の規定は、憲法第21条に違反しない。
オ.公職選挙法が、同法所定の組織的選挙運動管理者が買収等の所定の選挙犯罪を犯し禁錮以上の刑に処せられた場合に、公職の候補者であった者の当選を無効とし、かつ、これらの者が一定期間当該選挙にかかる選挙区において行われる当該公職に係る選挙に立候補することを禁止する旨を定めていることは、いわゆる連座の対象者の範囲を必要以上に拡大し、公明かつ適正な公職選挙の実現という立法目的を達成するための手段として妥当性を欠いており、憲法第15条に違反する。
1.ア、ウ
2.ア、エ
3.イ、エ
4.イ、オ
5.ウ、オ
ア.誤り。最大判平17.9.14民集59巻7号2087頁は、「国民の代表者である議員を選挙によって選定する国民の権利は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹を成すものであり、民主国家においては、一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられるべきものである。…(中略)…憲法は、国民主権の原理に基づき、両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており、その趣旨を確たるものとするため、国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。…(中略)…憲法の以上の趣旨にかんがみれば、自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として、国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。そして、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、上記のやむを得ない事由があるとはいえず、このような事由なしに国民の選挙権の行使を制限することは、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書に違反するといわざるを得ない。また、このことは、国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国民が選挙権を行使することができない場合についても、同様である。」「遅くとも、本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認めないことについて、やむを得ない事由があるということはできず、公職選挙法附則8項の規定のうち、在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書に違反するものといわざるを得ない」と判示している。なお、芦部信喜著・高橋和之補訂「憲法(第7版)」岩波書店274~275頁、宍戸ほか「憲法学読本(第3版)」216頁。準拠テキスト憲法197頁。
イ.正しい(最大判昭51.4.14民集30巻3号223頁)。「憲法は、前記投票価値の平等についても、これをそれらの選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準としているわけではなく、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他にしんしゃくすることのできる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができるのであり、投票価値の平等は、さきに例示した選挙制度のように明らかにこれに反するもの、その他憲法上正当な理由となりえないことが明らかな人種、信条、性別等による差別を除いては、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものと解さなければならない。」と判示している。準拠テキスト憲法51頁。
ウ.誤り。最判平2.4.17民集44巻3号547頁は、「本件削除部分は、多くの視聴者が注目するテレビジョン放送において、その使用が社会的に許容されないことが広く認識されていた身体障害者に対する卑俗かつ侮蔑的表現であるいわゆる差別用語を使用した点で、他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する等政見放送としての品位を損なう言動を禁止した公職選挙法150条の2の規定に違反するものである。そして、右規定は、テレビジョン放送による政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に到達して強い影響力を有していることにかんがみそのような言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものであるから、右規定に違反する言動がそのまま放送される利益は法的に保護された利益とはいえず、したがって、右言動がそのまま放送されなかったとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。」と判示し、違憲との主張を「その実質は単なる法令違背の主張にすぎない」と排斥した。準拠テキスト憲法74頁。
エ.正しい。最判昭56.6.15民集35巻4号205頁は、「戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害、すなわち、戸別訪問が買収、利害誘導等の温床になり易く、選挙人の生活の平穏を害するほか、これが放任されれば、候補者側も訪問回数等を競う煩に耐えられなくなるうえに多額の出費を余儀なくされ、投票も情実に支配され易くなるなどの弊害を防止し、もって選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ、右の目的は正当であり、それらの弊害を総体としてみるときには、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性があるということができる。そして、戸別訪問の禁止によって失われる利益は、それにより戸別訪問という手段方法による意見表明の自由が制約されることではあるが、それは、もとより戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問という手段方法のもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と公正の確保であるから、得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きいということができる。以上によれば、戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法138条1項の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法21条に違反するものではない。したがって、戸別訪問を一律に禁止するかどうかは、専ら選挙の自由と公正を確保する見地からする立法政策の問題であって、国会がその裁量の範囲内で決定した政策は尊重されなければならないのである。このように解することは、意見表明の手段方法を制限する立法について憲法21条との適合性に関する判断を示したその後の判例の趣旨にそうところであり、前記昭和44年4月23日の大法廷判例は今日においてもなお維持されるべきである。」準拠テキスト憲法82頁。
オ.誤り。最判平9.3.13民集51巻3号1453頁は、「公職選挙法(以下「法」という。)251条の3第1項は、同項所定の組織的選挙運動管理者等が、買収等の所定の選挙犯罪を犯し禁錮以上の刑に処せられた場合に、当該候補者等であった者の当選を無効とし、かつ、これらの者が法251条の5に定める時から5年間当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙に立候補することを禁止する旨を定めている。右規定は、いわゆる連座の対象者を選挙運動の総括主宰者等重要な地位の者に限っていた従来の連座制ではその効果が乏しく選挙犯罪を十分抑制することができなかったという我が国における選挙の実態にかんがみ、公明かつ適正な公職選挙を実現するため、公職の候補者等に組織的選挙運動管理者等が選挙犯罪を犯すことを防止するための選挙浄化の義務を課し、公職の候補者等がこれを防止するための注意を尽くさず選挙浄化の努力を怠ったときは、当該候補者等個人を制裁し、選挙の公明、適正を回復するという趣旨で設けられたものと解するのが相当である。法251条の3の規定は、このように、民主主義の根幹をなす公職選挙の公明、適正を厳粛に保持するという極めて重要な法益を実現するために定められたものであって、その立法目的は合理的である。また、右規定は、組織的選挙運動管理者等が買収等の悪質な選挙犯罪を犯し禁錮以上の刑に処せられたときに限って連座の効果を生じさせることとして、連座制の適用範囲に相応の限定を加え、立候補禁止の期 間及びその対象となる選挙の範囲も前記のとおり限定し、さらに、選挙犯罪がいわゆるおとり行為又は寝返り行為によってされた場合には免責することとしているほか、当該候補者等が選挙犯罪行為の発生を防止するため相当の注意を尽くすことにより連座を免れることのできるみちも新たに設けているのである。そうすると、このような規制は、これを全体としてみれば、前記立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものというべきである。したがって、法251条の3の規定は、憲法前文、1条、15条、21条及び31条に違反するものではない。」と判示している。
公務員試験では、選挙については、毎年、出題されます。教養試験の政治、時事、または、憲法で必ず出てきますので、選挙制度や選挙権に関する事項はしっかりと学んでおきましょう。
そして、国家公務員一般職行政の専門試験では、判例の理解がとても重要になります。ただその場合でも、まずは重要な判例から潰していきましょう!東京アカデミーのオリジナルテキスト「準拠テキスト憲法」は公務員試験を解くのに必要な重要事項をまとめて、わずか<231頁>しかありませんが、上記5つの肢のうち4つの肢に出てきた判例を掲載しており、かつ、正しい肢を2つしっかりと掲載しているので、正答を導くことができます。
上記解説のように判旨の細かいところまで覚えている受験生は、少数しかいないでしょうから、多くの科目を学習しなければならない公務員試験受験生は、効率よく合格を目指すために東京アカデミーのオリジナルテキスト「準拠テキスト」シリーズで学ぶのが一番です!
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