東京アカデミー立川教室
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こんにちは。公務員試験の予備校=東京アカデミー立川校の福島です。
今日も、2021年5月2日実施の東京都Ⅰ類の専門科目について、民法のNo.13<地役権>についての解説いたします。
No.13 民法に規定する地役権に関するA~Dの記述のうち、判例又は通説に照らして、妥当なものを選んだ組合せはどれか。
A 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人は、その義務を負担しない。
B 土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得するが、地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する。
C 最高裁判所の判例では、要益地が数人の共有に属する場合、各共有者は、単独で共有者全員のため共有物の保存行為として、要益地のために地役権設定登記手続を求める訴えを提起することができないというべきであって、当該訴えは固有必要的共同訴訟に当たるとした。
D 最高裁判所の判例では、通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、当該承役地が要益地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないとした。
1.AB
2.AC
3.AD
4.BC
5.BD
正答 5
A.誤り。設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担するので(286条)、誤り。
B.正しい(284条1項・3項)。
C.誤り。数人の共有の要益地のために地役権設定登記手続を求める訴えは各共有者の保存行為であって、固有必要的共同訴訟にはあたらない(最判平7.7.18民集49巻7号2684頁)。したがって、本肢は誤り。川井216頁。
D.正しい(最判平10.2.13民集52巻1号65頁=百選1・63事件)。
譲受人は、要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ、また、要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無、内容を容易に調査することができるので、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても、何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって、右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは、通常は信義に反するものというべきだからとしている。
なお、この判決の要旨は、「 通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。」とまとめられます。例えば、最高裁判所のホームページ。
問題文は上記青字の部分がないのですが、それがためにDは誤りとはなりません。赤字→黄色は成り立ちますので、D自体の内容は正しいのです。ACはそもそも明らかに誤りですから・・・。