東京アカデミー熊本校
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皆さん、こんにちは。
本日は、低学年の皆様へ 東京アカデミーの情報冊子スタディガイドプルミエから「今からはじめる国家試験」と題して学習のアドバイスをお送りいたします。どうぞ、参考にされてください。
【新たな気持ちでスタート!】
新学期を迎え、校内には新入生の初々しい姿がみられるようになり、先輩になった皆さん方も、気持ちも新たに学校に通われていることでしょう。
今年の国家試験も終わりましたが、自分たちの国家試験はまだまだ先のことと思われているのではないでしょうか。しかし、1 年間勉強してきてもわかるように、看護学の内容は多岐にわたり、膨大な知識が必要です。
しかも、最終学年になると、学校のカリキュラムは実習が占める割合が高く、朝早く起床し、帰ってからは、実習記録や調べ物に忙殺され、なかなか国家試験の勉強まで手がまわらないのが実情なのです。その上に就職活動もしなければなりません。
そうです。じっくり納得いく勉強ができるのは、実は今年だけなのですよ。そういう意味でも今年は皆さんにとって重要な年になります。しかし、今からそんなに頑張って1年間必死に勉強する必要はありません。それでは長続きしませんから。心構えをちょっと変えるだけで、今年1年が全く違ったものになります。それをこれからお話しようと思います。
【今年は土台作りの年】
既に皆さんは、『人体の構造と機能』や『疾病の成り立ちと回復の促進』『基礎看護学』などの学習は済んでいる方がほとんどだと思います。これらの基礎的な教科を土台にして、『成人看護学』『小児看護学』などの各教科を学習するわけですが、解剖生理学などの基礎医学の知識は「木」にたとえるならば「幹」や「根」にあたる部分です。ここさえしっかりしていれば、『成人看護学』などで習う疾患・治療・看護は「枝葉」のようなものなので、すぐに身に付きます。逆に「幹」がしっかりしていなければ、「枝葉」は広がっていきません。それは応用力
が育たないことにもなります。これから「幹」をつくるための国家試験に向けた勉強の方法を説明したいと思います。
【国家試験ではどんな問題が出題されるのか】
勉強法を説明する前に、まずは国家試験の特徴を説明したいと思います。毎年のように出題されているのが頭蓋内圧亢進症、脳ヘルニアです。第107回の試験でも4か月の女児の大泉門膨隆から脳圧の上昇を考え、CT所見から病名を判断する問題が出題されました。第102 回や第106 回の試験でも状況設定問題では、患者のバイタルサインから脳圧亢進に気づけるかが、解法の決め手でした。このように国試では、身体の機能という解剖学・生理学の知識と、疾患がきちんと結びついていないと解答できない問題が多くなっています。
それでは、具体的にどのように勉強すればいいのか、出題された問題を例に考えてみましょう。
【実際の勉強法】
まず、バセドウ病の定義ですが、「甲状腺刺激ホルモンに対する受容抗体(TSHレセプター抗体)による甲状腺ホルモンの分泌過剰」というような内容が教科書には書かれていると思います。自分の甲状腺刺激ホルモン受容体
に自己抗体ができてしまうわけですから、自己免疫疾患でもあるわけです。ここで、免疫機構を復習する手間を惜しまないのが重要です。
では生理学のテキストを開いてみましょう。免疫反応は大きく、「(体)液性免疫」と「細胞性免疫」の二つに分類されます。液性免疫とは、抗原侵入によってTリンパ球がBリンパ球に指令を出し、Bリンパ球が活性化されて形質細胞に変身して、抗体を産生します。この抗体は血清中に放出されますので液性免疫といいます。自己免疫疾患の場合は抗原が外から入ってくるわけではなく、自分の細胞や組織ということになります。また、細胞性免疫では抗体はつくらず、細胞傷害性T細胞などを主とする免疫細胞が直接抗原と戦う反応です。もちろん、バセドウ病では抗体がつくられるわけですから液性免疫になります。
これらの免疫反応に関する内容は今年の国家試験にも出題され、今後も出題される確率の高い分野です。もし興味があればさらに深く勉強してみるとよいと思います。
では、免疫反応がわかったところで、バセドウ病に戻ります。先ほどの問題で「負のフィードバック」という言葉が出てきましたが、ここで、フィードバックについての理解も欠かせません。再び生理学のテキストで調べてみましょう。すると、甲状腺ホルモンは視床下部を頂点として視床下部から甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンが、その下の脳下垂体前葉からは甲状腺刺激ホルモンが分泌し、さらに甲状腺から甲状腺ホルモンが分泌されていることがわかります。このように、甲状腺ホルモンは3段階で支配されており、バセドウ病のように抗体の作用で甲状腺が刺激されて甲状腺ホルモン分泌が亢進すれば、このホルモン刺激で視床下部や脳下垂体に抑制的に働きます。このような作用を負のフィードバックと呼びます。私たちの恒常性のほとんどがこの負のフィードバックによって調節されています。一方、正のフィードバックはあまり行われておらず、例を挙げるなら、エストロゲンのピークが刺激になって黄体形成ホルモンが分泌するというものです。
この機構がわかると、「バセドウ病=TSH受容抗体が陽性→TSHの減少」という意味がわかりますし、問題も解けます。
さらにテキストを見ると、甲状腺ホルモンのサイロキシンの成分がヨウ素であるため、検査ではヨウ素の摂取率が高値になることや、サイロキシンは基礎代謝を亢進させるホルモンなので、頻脈・多汗等の症状がみられることもわかります。第107回の国試では甲状腺機能亢進症の問題が出題されていました。第109回の国試では、甲状腺乳頭癌が出題されました。
このように疾患と解剖生理学を一体化させることで、症状や検査の意味が暗記ではなく理解し納得できるものとなります。疾患がわかれば、治療と看護は自ずとついてきますので、心配はありません。今回も例年同様、内分泌腺やホルモンに関する出題がありました。
また、薬理学が苦手だという人も多いと思いますが、疾患を学んだときに、薬理作用の機序・副作用まで合わせて勉強しましょう。たとえば成人看護の教科書の多くは、疾患に使われる薬の名前は書かれていても、機序までは書かれていません。そのため、暗記ばかりになってすぐに忘れてしまうのです。
解剖生理学→疾患→検査→治療・薬理→看護を一貫したものとして勉強する、そのことが大切です。時間がかかるように思えますが、この流れがわかれば、応用もききます。主な疾患だけでもそうしておけば、問い方がちょっと変わるともう答えられないということがなくなると思います。
【雑誌・テレビなどを学習に利用しよう】
先ほどの学習方法を読んで、「人体の構造と機能のテキストを広げて学習するのは大変だなあ」と思った方もいらっしゃるかもしれません。学校で使われるテキストは難解な漢字の並ぶ専門用語がいっぱいで解剖の図も緻密すぎて、どれが重要かわからないという場合も多いですね。そのようなときには、高校の生物の教科書や資料集がおすすめです。無味乾燥なテキストよりも視覚的にわかりやすくなっています。そこで基本的なことを理解しておけば、専門書の内容もすんなりと入っていきます。先ほど説明した免疫機序やフィードバックは、実は高校の生物でも習う内容であり、高校の教科書や資料集の図録にもわかりやすく記述されていますので、まだ持っている人はそれを使ってもよいと思います。また、重要な内容を知るために、国家試験用に教科ごとに重要な内容をまとめたテキストを利用するのもよいと思います。
しかし、できれば解剖の図などは教科書等でぜひ確認してもらいたいものです。その他テレビでも身体の仕組みや病気をテーマにした番組が放送されることも多いので、それを見ると机の上での勉強とまた違って、頭に入りやすいものです。
【多くの情報をキャッチするアンテナをもとう】
看護学は範囲の広い科目です。特に関係法規や社会福祉制度などは頻繁に変わるため、教科書が役に立たないこともしばしばです。医療や福祉に関する法律の改正は一般の生活に深く関わることだけに、国会で議論されたり、法律の改定があれば新聞などで必ず報道されますので、それを読むようにしてください。今年の国試では感染症法、免疫反応、感染予防など新型コロナに関係する問題が多数出題されました。また、高齢者率や出生率などの
人口動態、感染症の動向、児童・高齢者虐待など、新聞は貴重な情報源です。
勉強のすべてを机の上で、教科書によってする必要はありません。自分が看護学を学ぶ学生であり、人を相手にする職業に就く者だという自覚をもち、情報キャッチのためのアンテナをいくつも張っておけば、国家試験だけでなく、就職試験や看護師になった後にもきっと役立つと思います。
【学校や病院での実習を活用しよう】
学校によっては学年の終わりから病院実習が始まるところもあるかと思います。実際に目で見てやってみることにより、知識は確実になります。また、実習ではどうして看護師さんがそのようなことをしているのかわからないことも多いでしょう。そのときには恥ずかしがらずに尋ねるようにしましょう。どうしてなのか、という疑問をもつことが一番大切なことです。近年、検査に関する問題が多数出題され、内容がより実践的になっています。教科書を勉強しただけでは解けないような自分で考え判断する問題も多く、いかに密度の濃い実習をしたかが重要になってきています。
【過去問にチャレンジ】
学校での講義で一つの単元が終わったら、復習の意味で過去問にトライするのもよいことです。重要な内容は出題の方法は変わっても何度も出題されていますので、問題を解くことで、その単元の重要なポイントが自然に頭に入っていきます。問題を解いて、また教科書に戻ることで、知識が確実なものとなります。国家試験は、過去問の問題集だけでは暗記ばかりになり、応用がききません。教科書や国家試験用に内容をまとめた参考書などを利用して勉強しましょう。そのときにはできるだけ『人体の構造と機能』のテキストもそばに置くことを忘れないでください。いつも身体のイメージが浮かぶことは大切なことです。
【最後に】
国家試験を射程に入れた勉強法を説明してきましたが、いかがだったでしょうか。全部を行うことは難しいかもしれませんが、ちょっとした心構えでできることもあると思いますので、「明日から」と言わずに、さっそく今日から実行してみてください。
看護系の大学も増え、看護師は質の時代だといわれます。もはや「資格を取れば安心」という時代ではありません。自分の将来のヴィジョンをしっかりともって、確かな知識と技術が身に付くように、充実した学校生活を送ってください。