東京アカデミー熊本校
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みなさん、こんにちは。
今日は第110回看護師国家試験を徹底検証いたします。
【実施結果概要】
受験者数 66,124人(過去最高)
合格者数 59,769人
不合格者数 6,355人
合格率(全体)90.4% 現役合格率95.4%、既卒者合格率44.4%
合格基準 ①必修問題40点以上/50点(8割)
②一般問題、状況設定問題159点以上/250点(61.3%)
東京アカデミーの自己採点会に参加された方41,911人(63.3%)
参加していただいた皆さんには改めてお礼申し上げます。
それらデータから当社講師代表 坪井いづみ講師が検証いたします。
◆問題の難易度について
東京アカデミーで集計した平均点は、必修問題が46.9点、一般問題と状況設定問題は188.2点でした。必修問題は50問中47問が正答率80%以上、また正答率が70%を下回る問題も1問のみでした。一般問題と状況設定問題も、第109回より平均点が上がっているため、解きやすくなったと考えられます。必修問題が易化し、39点以下となった受験
者の割合が減少する一方、一般問題・状況設定問題の合格基準点(158点)以下となる割合が例年よりも増加しています。よって必修問題で点数が取れていたものの、一般問題・況設定問題の点数が足りない受験生が第109回と比較して多くなったことが予想されます。
◆過去問題の利用について
過去問題の活用は例年と同じく、一定数みられているのは現状通りですが、近年の国家試験と同様「過去問題をそのまま」という出題を控えている印象があります。過去問題をベースにしたうえで、丁寧にブラッシュアップして出題されています。よって過去問題をただひたすら、「答えの番号」を暗記するまで解くという方法では、ある一定ライン以上の得点ができないのではないかと思われます。
◆必修問題講評
第109回と同様、解きやすい問題が並びました。東京アカデミーの集計では80%以上正答率を持つ問題は、47問を占めています(70%以上は49問です)。例年通り、目標Ⅰ〜Ⅳまで大きな変動なく出題されました。
必修問題で問われることは基本、重要事項です。形を変えて、一般問題、状況設定問題でも出ることがあります。設問に絡んだ知識も一緒におさえましょう。
◆科目別講評
①人体の構造と機能(正答率:55.5%)
四肢択一が少ないこと、正答率が70%を超える問題が3問のみ、過去問題では登場したことのない内容の設問がみられたこと、過去問題の正答率が低かった設問の再登場などから第109回(正答率:53.3%)と同様に第110回でも正答率は低くなっています。
②疾病の成り立ちと回復の促進(正答率:50.4%)
第109回(正答率:63.4%)より正答率が下がりました。病理学、薬理学、微生物学の範囲から出題されますが、今年度も例年同様、病理学中心の出題です。なお、看護師国家試験における病理学では細胞診断に関するものはほとんど出題されず、疾患の理解、経過、検査、治療に関する問題が多いです。
③健康支援と社会保障制度(正答率:73.2%)
第109回(正答率:57.1%)で低くなった正答率は、第110回では上昇し、正答率が90%を超える問題が多く出題されました。
④基礎看護学(正答率:80.7%)
第109回(正答率:82.2%)とほぼ同じ正答率となり、過去問題をベースに学習することで十分得点が可能な問題が並びました。
⑤成人看護学(正答率:一般70.5%、状況71.0%)
一般問題では「Aさん」から始まる短い状況設定を付与した問題が多くなりました。状況設定問題では、検査データをもとにしたアセスメントが必要な設問が従来通り出題され、
肥満症の腓骨骨折、急性骨髄性白血病、完全房室ブロック、子宮体癌が出題されました。全体的に病態生理、検査・処置についての設問は正答率が低くなる傾向があります。
⑥老年看護学(正答率:一般77.2%、状況86.0%)
一般問題は第109回から引き続き、正答率が低下する高齢者の生理的特徴を問う設問が並びました。また老年のアセスメントツール、老年に関連する社会保障制度の設問も点数が
伸び悩みます。過去問題でしっかりと掘り下げた学習をしていきましょう。状況設定問題は、認知症、看取り、大腿骨頸部骨折の症例が出題されました。
⑦小児看護学(正答率:一般75.8%、状況78.9%)
一般問題、状況設定問題ともに正答率は大きな変化がありません。過去問題をベースに選択肢が大きく変更され、一見、新規の問題のように見える問題がよく出題されます。対
策としては頻出である小児の成長発達を早めにおさえ、それと合わせて過去問題を通して頻出疾患を学習していきましょう。過去問題を「解く」ことだけに終始するのではなく、解説を読み込み周辺の知識も学習していきま
しょう。
⑧母性看護学(正答率:一般67.8%、状況83.2%)
一般問題、状況設定問題ともに解きやすい内容でした。過去問題を一通り解くことによって、十分に点数が得られる難易度で、従来通りの周産期を中心とした構成でした。母
子保健に関連した社会保障制度の問題も多く出題されています。状況設定問題でも過去問題をベースにした周産期および新生児の出題となっており、周産期以外の事例はありませんでした。
⑨精神看護学(正答率:一般71.1%、状況77.5%)
一般問題の正答率がやや下がりました。近年はケアや対応を問う内容よりも、疾患そのものの理解や精神関連の法規や統計に関する問題が多くなっており、この傾向は第110回でも続いています。状況設定問題では、ADHD、薬物依存、対応が困難な双極性障害など、症例的には新しいものが出題されましたが、正答率はやや上がりました。
⑩在宅看護論(正答率:一般87.7%、状況80.6%)
一般問題、状況設定問題ともに正答率が上がりました。一般問題では、「Aさん」から始まる、短い状況から判断する問題や社会資源問題が中心の構成になっています。また高齢者介護を中心とした作りである傾向も変化して
いません。状況設定問題では「読解力」が求められる設問で点数に変化が出たように思われます。
⑪看護の統合と実践(正答率:一般88.4%、状況76.5%)
看護管理、安全管理、国際看護、災害看護から出題される科目です。一般問題は、第109回より正答率が上がり、状況設定問題は下がりました。一般問題では、受験生が苦手としやすい社会保障制度関連の問題が減少したこと
が解きやすくなった理由の一つと考えます。状況設定問題は従来通り複数の領域にまたがる看護に関した問題と、災害看護学から出題されました。
◆まとめ
以上、第110回の国家試験の概要を踏まえ、第111回国家試験での合格に向けての学習ポイントをあげてみました。
①出題基準の内容を確認してみよう
いきなり過去問題集を解き始めていくのではなく、まずはどのような箇所が出題基準に掲載されているのかを確認しましょう。特に必修問題対策では欠かせません。
②全国での自分の位置を知った上で計画を立てよう
国家試験は例年約90%の合格率をもっています。したがって落とす試験ではなく、ある基準点に達していれば合格できる試験です。ただし、一定数の落ちる人がいるのも事実です。そのため、全国での自分の学習レベルを把握し、対策をとることが必要不可欠です。基準点以上にあれば、必要以上に焦ることもありません。また、基準点に満たない人であれば、他者よりも早めの対策を立てることにより十分に合格する力を養っていけます。模試を定期的に受けて実力の確認と結果を学習に反映させていきましょう。
③必修問題対策をおろそかにしない
必修問題はその年ごとに変化をする相対基準ではなく、絶対基準で作成された問題です。80%の得点率が求められる試験であることを意識し、単純想起型中心であることを念頭におき、出題基準の小項目に関連した事項につ
いて、正確で確実な学習をしていきましょう。特に暗記が苦手だと自覚している場合は、できるだけ早めに対策を取っていきましょう。
④過去問題の利用について
国家試験対策にとって最も基本となるべきものであり、今後も変わりません。問題数をこなす、問題集を何周するという物理的手法は、学習要領が自分なりに確立している一定学力以上の学生には有効です。しかし、成績が伸び悩む学生には不向きであることがほとんどです。自分の力量を見極め、過去問題を通して問題を構成している知識の理解や、重要事項を正確に覚える「質」重視の学習をしましょう。
⑤社会保障制度対策を十分に行おう
ここ数年、社会保障制度関連の問題が多く出題されています。過去問題を解くだけでは、法規の改正や統計データの推移などが不十分になりやすいです。『国民衛生の動向』の読み込みやダイジェスト版、参考書などを有効活
用して、出題基準に挙げられている項目を一度は確認しておきましょう。
⑥読解力の練成
近年、問題文が長文化しています。また、過去問題で出題されたテーマ、事項を「別の言葉で言い換えて出題」という形式が多くみられています。日々の学校生活、実習の中で教科書や文献をベースにした上で、自分の言葉で
表現することを心がけていきましょう。
国家試験問題の難易度は年によって大きく異なります。それでも、第111回を受ける受験生は、どんな難易度の問題であれ、必修9割、一般・状況7割を得点する力をもつことを目標に、計画的に学習を進めていきましょう!