東京アカデミー津田沼校
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こんにちは。東京アカデミー立川校の教員採用試験担当です。
東京都教員採用試験は8月に二次面接試験が終了し、残すは一部校種教科の実技試験(9/12)のみとなります。ご受験されている方は最後まで走り抜けてください。
来年受験予定の方はこれから本格的に学習をスタートされる方が多いかと思います。
試験対策のはじめの一歩は、試験分析ですよね。何から手を付けていいかわからない方は、今年の試験でどんな問題が出題されたのか確認するところから始めてみましょう。
では、今年の東京都の教養試験から1問ピックアップしてみます。
16 キャリア教育に関する次の記述ア~エのうち、正しいものを選んだ組合せとして適切なものは、下の1~5のうちのどれか。
ア キャリア教育とは、一定又は特定の職業に従事するための必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育である。
イ キャリア教育は、特定の活動や活動方法に限定されるものではなく、様々な教育活動を通して実践されるものである。
ウ キャリア教育で育成すべき「基礎的・汎用的能力」は、「人間関係形成・社会形成能力」、「自己理解・自己管理能力」、「課題対応能力」、「キャリアプランニング能力」の四つで構成されている。
エ 生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を、義務教育を修了するまでに、身に付けさせることを目標とすることが必要であるとされている。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・ウ
4 イ・エ
5 ウ・エ
キャリア教育に関する問題は、2015年~2017年の間に毎年出題されていましたが、共通問題ではここ3年間出題がありませんでした。今年出題されたのは「新たな動き」があったからと推察しますが(後述)、直近の出題だけをみるのではなく、キャリア教育のような重要項目は確認しておきたいところです。
東京アカデミーで6月下旬に実施した短期講習・県別直前対策講座の講座テキストにも、東京都の頻出項目としてキャリア教育の問題を収録していました。
県別直前対策テキストに掲載されていた問題の一部を抜粋してみます。
■ キャリア教育に関する記述として適切なものは、次の1~5のうちのどれか。
1 キャリア教育とは、一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育である。
=略=
4 児童・生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ることが求められている。
=略=
この問題の肢1は本試験の「ア」と全く同じ誤った選択肢です。この選択肢で説明されているのはキャリア教育ではなく職業教育の説明でした(「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(2011年1月・中央教育審議会答申)」より)。
これが分かっているだけでも本試験の選択肢1と2は誤りと分かります。
また、このテキストの問題の正答にあたる肢4は2017年・2018年告示の学習指導要領総則「児童(生徒)の発達の支援」の内容に合致します。旧学習指導要領から改訂された箇所のため要注意となります。
キャリア教育は「特別活動を要とし」ということですが、学習指導要領の「特別活動 第2 各活動・学校行事の目標及び内容〔学級活動〕3内容の取扱い」でも、
「学校、家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方を考えたりする活動を行うこと。その際、児童(生徒)が活動を記録し蓄積する教材等を活用すること。」
という記述が、やはり新規に見られます。
これをキャリア教育に当てはめ、長期的なキャリア形成を子どもたち自身が考えていけるよう、2020年4月から「キャリア・パスポート」が導入されることになりました。
※キャリア・パスポートとは
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1419917.htm
(文部科学省「キャリア・パスポート」の様式例と指導上の留意事項(PDF) 2ページ目「4 定義」)
また、2021年2月に文部科学省から「キャリア・パスポート」活用の際のQ&Aや学年・校種間の引継ぎが公開されています。
教育現場におけるキャリア教育の新たな動きとして「キャリア・パスポート」が導入されたことを受けて、今年の東京都の試験でも出題されたように思います。
やはり、最新時事は押さえておくべきかと思われます。
ちなみに本試験16番の正答番号は選択肢3です。
さて、今回は今年の東京都教員採用試験の中から1問ピックアップしてその出題について考察してみましたが、いかがでしたでしょうか。
「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(2021年1月・中央教育審議会答申)」の第Ⅰ部総論には、
「急激に変化する時代の中で、我が国の学校教育には,一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、その資質・能力を育成することが求められている。」
とあります。
また、東京都教育委員会は、2019年度~2023年度の方針として「東京都教育ビジョン(第四次)」を定め、
「産業・就業構造が大きく変化している中で、様々な課題に柔軟かつ適切に対応し、 社会人、職業人として自立していくための教育の推進が求められています。」
として、キャリア教育の充実について述べています。
これらのことからも、来年以降の教員採用試験でも「キャリア教育」についての出題は狙われるのではないでしょうか。
近年の教育現場を取り巻く環境は著しく変化し、それに連動する形で教員採用試験の出題傾向も変化していきます。
東京アカデミー立川校では、東京都の教養試験の過去の本試験から本年実施試験の出題傾向や学習法についてお話しする「傾向分析会」を実施します。頻出分野などを確認して、今後の学習の指針としていただけると幸いです。2022年実施試験を受験予定の方はぜひご参加ください。