東京アカデミー静岡校
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こんばんは。
東京アカデミー静岡校の大卒程度公務員担当の浅山です。
前回の民法第486条に第2項の追加に引き続き今回は不動産登記法の改正についてです。
法改正に至った背景として、
不動産の相続登記がされないこと等による「所有者不明土地」が多数発生していること
が挙げられ、その総面積は九州本土より大きいともいわれています!
そもそも、不動産の相続登記がされない原因は、
・相続登記の申請が義務ではない(放置していても通達等は無い)
・相続人及び被相続人の「土地の所有意識」が低下している
といったものが挙げられます。
そうして相続登記がされないことが増えた結果、
・不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない(登記時点から所有者が更新されていない)土地
・所有者の所在が不明(登記時点から住所変更情報が更新されていない)で連絡が付かない土地
といった所有者不明土地が多数発生しているのです。
こういった土地は、
・登記されないまま相続が繰り返され、不動産共有者がねずみ算式に増加
(→ 改めて登記しようにも許可をとるべき共有者が多すぎて不可・困難……)
・活用するために許可が必要な所有者が不明瞭
(→ 所有者の特定に多くの時間・費用が必要……)
・管理されないまま放置
(→ 九州本土にも相当する面積の土地が、何にも活用されないまま……)
といった多くの問題を抱えており、この度法改正による整備が図られることとなりました。
今回の改正では、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制の見直しが行われています。
まず、「発生の予防」の観点から、下記3項の変更があります。
1. これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化
a. 不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける。
(正当な理由が無い申請漏れ*には10万円以下の過料が科されます。)
b. 不動産を所有する人は、住所や氏名の変更があった場合、変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける。
(この場合も、正当な理由が無い申請漏れ*には5万以下の過料が科されます。)
*どういった場合に正当な理由が無いと判断されるかは、将来的に法務省から通達が出される見込み。
2. 上記申請手続の簡素化・合理化
a. 相続人申告による登記を可能とする(新設)
相続人一人ひとりが単独で申告可能となると共に、添付書面の提出についても簡易化することで、相続登記の申請義務の履行が容易になります。
b. 登記官による情報参照・変更反映の権限を拡張
・登記官が、他の公的機関(住基ネットなど)から死亡等の情報を参照し、職権で登記に反映・表示する仕組みが設けられます。
(登記データから名義人の死亡の有無が確認可能となる。)
・登記官が、生年月日等の「検索用情報」を用いて住基ネットより参照し、登記名義人の氏名・住所等の変更情報を取得・反映する仕組みが設けられます。
(氏名の変更や転居に伴う住所等の変更が、簡素な手続で登記に反映可能となる。)
c. 所有不動産記録証明制度(新設)
特定人物が登記名義人となっている不動産一覧の証明書を発行し、相続登記が必要な不動産を容易に把握できるようになります。
(いわゆる「名寄せ」を可能とし、特定人物の相続登記漏れを予防することが可能となる。)
3. 相続等により土地の所有権を取得した者が、その土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設
「所有者不明土地“予備軍”」となり得る土地の所有権を、国に移譲することができる制度。
(ただし、管理コストを一方的に国に転嫁する状況や、土地所有者の土地管理が疎かになる事態を防ぐため、制度利用には条件が課されます。)
続いて、「利用の円滑化」を図る観点から、所有者不明土地の管理に特化した下記4制度が創設されます。
1. 土地・建物の管理制度の創設(財産管理制度の見直し)
裁判所が選任した管理人により、所有者不明土地・建物を売却することが可能となります。また、所有者による管理が適切でなく、放置されている土地・建物(ゴミ屋敷、廃墟など)が他人の権利を侵害するおそれがある場合、裁判所が管理人を選任することが可能となります。
(所有者不明土地・建物の管理が効率化・合理化すると共に、管理不全化した土地・建物の適切な管理が可能となる。)
2. 不明共有者がいる場合への対応(共有制度の見直し)
相続登記がされず相続人による共有物状態となっている土地について、裁判所の関与の下で、不明共有者等以外の共有者の同意により、共有物の変更・管理行為が可能となります。また、より根本的な解決策として、裁判所の関与の下で、不明共有者の共有持分に対する不動産の共有関係を解消することが可能となります。
(不明共有者がいても共有物の利用・処分を円滑に進めることが可能となる。)
3. 遺産分割長期未了状態への対応(相続制度の見直し)
相続開始から10年を経過したときは、個別案件ごとに異なる“相続人の貢献度”や“生前に相続人が受けた援助”などによる分割利益を消滅させ、画一的な法定相続分で遺産分割を行うことが可能となります。
(遺産分割長期未了状態の土地の解消が促進される。)
4. 隣地等の利用・管理の円滑化(相隣関係規定の見直し)
電気、ガスなどのライフラインを自己の土地に引き込むための導管等の設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できるようになります。
(ライフラインの引き込みを円滑化し、土地の利用が促進される。)
この改正法は2021年4月に成立・公布され、2022年以降に施行される見込みです。
正式な発表はありませんが(2021年8月31日時点)、国民への影響が大きいことを考えると、2023年(令和5年)4月1日施行がわかりやすいのではないでしょうか?
ただし、国民への影響が大きく周知期間が必要な改正については公布から3年以内(2024年4月まで)、
登記情報システムの改修が前提となる改正項目については公布から5年以内(2026年4月まで)に施行される見込みとなります。
「相続登記の義務化」「登記官の職権による住所変更・死亡情報等の登記」などに関する改正は施行されるタイミングが異なりますので注意しましょう。
また、公務員試験では現行法での出題が原則ですので、2023年試験以降に関連内容が出題される可能性が高いと予想できます!
特に今回の改正は「不動産登記」という、どなたにも関わりがある内容ですのでしっかり目を光らせておきましょう。
さらに詳しく知りたい!という方は法務省HPにて改正案の概要が詳しく紹介されていますよ!
参考→ 「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」
参考→ 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し
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