東京アカデミー札幌校
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札幌校の手島です。
今日は行政法の一内容の「処分性」についてお話します。
この「処分性」は、「原告適格」と並んで行政法の2大論点
ともいえる内容になります。
どちらも「行政事件訴訟法(行政活動による損害の救済の裁判で用いる法律)」に
出てくる重要な訴訟要件(訴えを起こすための条件)になるのですが
近時の判例ではこの「処分性」について、被害者救済の観点から解釈が変化してきています。
そもそも「処分性」の定義は・・・
「処分性」とは行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」を指します。
判例によるとその定義は「公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を画定することが法律上認められているもの」であり、①公権力性②直接法的効果性の観点から判断するものとされています。
※①国や自治体がする行為のうち②国民の権利に「何かしら」の影響が生じるものとイメージしておくと良いかもしれません。
試験対策としては・・・
この「処分性」の結論について「事件の名前」と「結論」を覚えていくことになります。
例えば「土地改良事業⇒処分性あり」、「国有財産の払い下げ⇒処分性なし」のような感じで良いと思います。結構な数がありますが、覚えておくと確実に点になる部分ですし、心して暗記しましょう。
ところが最近の判例で・・・
この「処分性」をめぐっては、近時の判例では処分性が「あり」と認める対象を拡大する傾向にあります。対象を増やした方が被害者の救済には有益だろうという視点の発想ですね。
こういった判例の視点を「実効的権利救済の観点に立つ」と法律の世界では呼んでいます。
実際にも、都市計画に関する「土地区画整理事業」についての事件(最判平成20年9月10日)で、判例の変更が行われ、処分性が「ある」との結論を司法は導き出しました。
行政法や憲法(この二つを合わせて公法系といいます)に関しては、近年、こうした形で被害者の救済の目線に立った判断が増えてきており、上記のような形で判例の変更が行われています。
⇒この判例の変更が試験対策の上では気を付けるべきポイントにもなってきます。記憶の混同が起きないように気を付けたいですね。
この「処分性」と次回以降に紹介する「原告適格」を押さえると行政法のイメージがつかみやすくなるので、粘り強く学習してみてくださいね。