東京アカデミー東京校
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こんにちは。東京校公務員チューターです。今回は民法②物権における注意して欲しいところについてお話しします。更新が遅くなってしまい申し訳ありません。宜しくお願い致します。
物権は文字通り物を直接に支配する権利で、債権とは違い全ての人に主張できます。不動産賃借権だけは債権でも物権と同様に第三者に対抗できることがあることを覚えておきましょう(不動産賃借権の物権化)。また物権の効力として排他的効力・優先的効力・物権的請求権があることは物権を学習する上での最低知識です。特定物・不特定物の所有権移転時期や公信の原則が不動産には認められないことも忘れがちですので要注意です。
不動産はとにかく第三者との関係が大切です。といいますか、物権そのものが第三者との関係が多く問題になってきます。背信的悪意者や転得者との関係、相続による登記の有無の3パターン、取消し・解除・取得時効の前後における登記の有無など、とにかく第三者との関係と登記の有無を一つひとつ覚えていくしかないですね。
動産は引渡しの4パターン、特に占有改定を忘れないようにしましょう。即時取得では占有改定が要件にならないためです。即時取得は前権利者が無権利者のときしか成立しないことは当たり前ですが忘れやすいので注意しましょう。盗品・遺失物は2年間の間その物の回復を請求できますが、その間の所有権は原権利者にあるので引っかからないようにして下さいね。
占有はまず自主占有・他主占有・自己占有・代理占有の定義を混同しないようにしましょう。民法➀でやった通り、取得時効などにおける占有の承継は絶対に忘れてはならないですが、その他にも占有者の費用償還請求権として、必要費を果実取得者は原則請求できない事・有益費は悪意でも請求できる(回復者に相当の期限)ことを理解しておきましょう。その他では占有者の果実取得権・悪意の占有者の果実返還義務・占有権の消滅における占有擬制も頻出です。要するに占有はとても大切ということですね( ..)φメモメモ
占有訴権としてはまずその占有の正当の是非に関わらず請求できるということが大きなポイントです。その上で占有保持・占有保全・占有回収の3つの訴えをしっかり覚えましょう。提訴期間は基本的に1年以内、占有訴権における裁判で本件の主張はできない事、訴えそのものに分件に基づいた反訴を提起することができる点も忘れずに。
所有権においては2021年に改正があったようで、隣地使用権や竹木の枝の切除に変更がありました。もしかしたら出題されるかもしれないですね。所有権の取得としては無主物先占・遺失物取得・埋蔵物の発見・付合・加工などがありますが、これら5つでセットの問題が出されるケースがあったのでまとめて覚えておけるといいですね。共有も比較的マイナーな範囲ですが、使用・変更・管理・処分・分割と出題されやすい論点が揃っています。ここは他の受験者と差が付くポイントの一つだと思います。また使用・変更・管理・分割においては改正されたところがあるので併せて覚えておくといいでしょう。
用益物権は地上権・地役権と少ないので面倒くさがらずに手早く覚えてしまいましょう。
地上権はざっくり言うと賃借権の上位互換だと私は思います。アカデミーのテキストを含む多くの参考書には恐らく賃借権との比較が載っていると思いますので比較して覚えましょう。
地役権は承役地(他人の土地)と要役地(自己の土地)の便益に関する権利ですが、問題になるのは地役権設定の理由と要役地の共有・時効ですので少し細かいですが頑張りましょう( ゚Д゚)
さて、ここまで基本物権を書いてきましたが本番はここからの担保物権です。
担保物権はまず性質として付従性・随伴性・不可分性・物上代位性があることと、抗力として優先弁済的効力・留置的効力・収益的効力があることを理解しておきましょう。
まず法定担保物権としては留置権と先取特権があります。
留置権はややこしい成立要件よりも効力の方が頻出です。留置権は登記できないこと・優先弁済的効力がないこと・果実を自己の弁済に充当できること・留置権者は善管注意義務を持ち、保存に必要な使用は単独で可能なこと等論点が多いので一つずつ理解していきましょう。
先取特権は優先弁済的効力を主とした担保物権で対象の動産が第三者に引き渡される前に差し押さえないと先取特権は消滅することを覚えておきましょう。また先取特権は一般・動産・不動産に分かれますが先取特権自体マイナー論点なので自身の学習の進捗によってやっておくか決めましょう。特別区は最近法律系が難化傾向でマイナー論点からも出題の可能性があるのでやっておくといいかもしれません。
約定担保物権としては質権・抵当権などがあります。
質権は譲渡可能な財なら設定できて、特に不動産質は使用収益権を含む一方で利息を請求できない点が特徴です。また何となく質のイメージで分かると思いますが、占有改定では成立しません。頻出の論点としては質権者が質物の占有を失った場合(被略奪)です。不動産質の場合、対抗要件は登記なので問題ありませんが、動産質の対抗要件は質物の占有なので質権に基づく返還請求ができず、占有回収の訴えによって取り戻すことになります。またこの規定も詐欺や遺失では適用されず取り戻すことが出来なくなることも忘れやすく出題されやすいので覚えておいてくださいね。転質は承諾転質と責任転質がありそれぞれの責任を覚えておけばいいと思います。
抵当権は担保物権のいわゆる花形で覚えることも多いです。対象は主に不動産、地上権・永小作権も可です。皆さんも担保と聞いたらこの抵当権のイメージが強いのではないでしょうか。「土地を担保に」などとよくドラマでも見ますよね。抵当権の範囲は付合物が当然に含まれ、果実については被担保債権に債務不履行があった後に生じた果実には及ぶことが特徴です。また抵当権は設定当時既に存在する借地権にも及びます。忘れやすいので気をつけましょう。対抗要件は勿論登記です。弁済は基本的に上の順位の抵当権者から受けていきます。その中で債権者が複数いる場合、利息などは満期の最後に2年分のみ弁済されることは頻出です。抵当権に消滅については第三者側からの抵当権消滅請求と代価弁済がありそれぞれの内容を覚えておきましょう。
また抵当権に付随する論点として法定地上権があります。法定地上権は➀建物が建っていること、②抵当権設定当時に土地と建物が同一の所有者に帰属すること、➂土地建物の片方又は双方に抵当権があること、④競売によって土地と建物が異なる所有者に帰属するに至ったこと、この4つを満たしていることが条件なのは必ず知っていなければなりませんが、たまに問われるのが共有の場合の法定地上権です。土地建物どちらが共有か、どちらに抵当権を設定するかで4パターンに分かれますが、覚え方はいたって単純で、「建物共有なら成立」これだけです。どっちに設定するかは問題ではありませんので手早く覚えてしまいましょう。
地味に出題されるのが引渡し猶予期間などによる賃借人の保護です。簡単に言えば「抵当権が設定されていた土地の上にある不動産を借りていた人は、抵当権実行による競落人に対抗できない」ことに対する保護ですね。これは6カ月保護されることになっていますので頭の片隅に入れておいてください。
最後に根抵当権です。一定の時間的範囲内における継続して繰り返される取引(銀行からの融資など)はいちいち抵当権を設定して担保を決めていては面倒ですよね。そのため「極度額」という担保で払える限度額を決め、その範囲内で債権をいくつも成立させることができるのが根抵当権です。根抵当権はその性質上借りている元本が決まるまでは付従性・随伴性がありません。元本確定期日は5年以内または定めないこともあります。少しふわふわしていますが、要するに元本が決まるまでは不確実、決まったら抵当権とほぼ同じということです。一つ大きく違うこととして根抵当権は複数債権者が存在する場合の利息等2年分が適用されない事だけは注意しましょう。理由は極度額があらかじめ分かっており、利息なども計算した上で債権を設定するはずなので2年分に限定する必要が無いからです。
説明なども多く入ってしまいましたが以上物権になります。大ボリュームでした…(;´・ω・)
物権は兎にも角にも占有権・所有権と担保物権です。頑張ってください。とはいってもここまで頑張ってやっと民法Ⅰ総則・物権の5問(※国家一般職・特別区の場合)です。次回の債権も恐らく大ボリュームになると思いますが読んでいただけると幸いです。ではまた次回民法➂債権でお会いしましょう(^^)/