東京アカデミー横浜校
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こんにちは、東京アカデミー横浜校の国家試験担当です。
本日は東京アカデミー横浜校の通年講座(通学・対面式)を担当される佐藤先生よりコロナ禍の現代社会において今後も狙われやすい問題を第34回国家試験の本試験よりピックアップしてもらい、解説と学習ポイントについてコメントをいただきましたので紹介させていただきます。今後の学習にお役立てください。
■問題26(正答率21.3%)
イギリスにおける貧困に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 ラウントリー(Rowntree.B.)は、ロンドンで貧困調査を行い、貧困の主たる原因が飲酒や浪費のような個人的習慣にあると指摘した。
2 ベヴァリッジ(Beveridge.W.)による「社会保険および関連サービス」(「ベヴァリッジ報告」)は、「窮乏」(want)に対する社会保障の手段として、公的扶助(国民扶助)が最適であり、社会保険は不要であるとした。
3 エイベル-スミス(Abel-Smith.B.)とタウンゼント(Townsend.P.)は、イギリスの貧困世帯が増加していることを1960年代に指摘し、それが貧困の再発見の契機となった。
4 タウンゼント(Townsend.P.)は、等価可処分所得の中央値の50%を下回る所得しか得ていない者を相対的剥奪の状態にある者とし、イギリスに多数存在すると指摘した。
5 サッチャー(Thatcher.M.)が率いた保守党政権は、貧困や社会的排除への対策として、従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」の考え方に立つ政策を推進した。
■正答 3
■解説
1 ✕ ロンドン調査をしたのは、ブースである。ラウントリーはヨーク調査を実施した。
2 ✕ 「社会保険および関連サービス」では、「窮乏」は、社会保険制度を整備することで解決できるとした。
3 〇
4 ✕ 設問は、OECDにおける「相対的貧困」の定義である。
5 ✕ 「第三の道」はブレア政権の理念である。
■学習のポイント
・選択肢1、2、5は、頻出分野であるイギリスの社会福祉の歴史に関する問題です。年表を
作成して、内容を整理するとよいでしょう。
・3、4は、貧困に関する問題です。コロナ禍の現代社会では、「貧困」は大きな課題です。
今後も出題される可能性が高いです。貧困に関するキーワードは、整理しましょう。
■問題97(正答率16.1%)
事例を読んで、生活困窮者を対象とした自立自立相談支援機関で相談に当たっているD相
談支援員(社会福祉士)のこの段階における対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Eさん(45歳、女性)から相談窓口に、「毎日不安でたまらない。どうしたらよいか」という
電話があり、その結果、来所面接となった。Eさんは独身で、兄弟はおらず、両親を15年
前に相次いで亡くしている。高校卒業後、様々なパートタイムの勤務をしたが長続きはせず、
現在は失業中である。軽度のうつ病のため通院しており、主治医からは時間をかけて治療し
ていきましょうと言われている。両親の没後、古い家を相続して住んではいるが、一時、収
入があると、物を購入することがやめられず、家中が物で溢れている。既に、手持ちの資金
が底をついており、就労を考えたこともあるが、勤務先でのつらい体験が浮かび、何事をす
るにも自信が持てない。また、友人など周囲に相談できる人はほとんどおらず、孤立感を感
じている。
1 生活困窮者一時生活支援事業の利用を勧める。
2 生活福祉資金貸付制度の利用を勧める。
3 債務処理に詳しい司法の専門家と連携を取る。
4 Eさんの症状を把握するため、Eさんの了解を得て、通院先の病院と連携を取る。
5 地域での孤立感を軽減するため積極的にボランティア活動へ参加することを提案する。
■正答 2、4
■解説
1 ✕ 生活困窮者一時生活支援事業は、住居のない生活困窮者で所得が一定水準以下の者に対して、一定期間内に限り、宿泊場所の供与、食事の提供と、衣類その他の日常生活を営むのに必要となる物資を貸与又は提供するものであり。Eさんは対象ではない。
2 〇 「手持ちの資金が底をついており」と事例にあるので、適切である。
3 ✕ 事例に「債務がある」という記述はないので、適切でない。
4 〇 支援方針を決定するためには、Eさんの病状を把握する必要があるので適切である。
5 ✕ 友人など周囲に相談できる人はほとんどいないEさんの孤立感を解消するための支援として、積極的にボランティア活動への参加を進めるのは、適切ではない。
■学習のポイント
コロナ禍の現在社会では、生活困窮者自立支援制度、生活福祉資金貸付制度、生活保護制
度の利用者は急増しています。今後も出題される可能性が高いです。それぞれの制度の内容
について、表を作成するなどして整理しましょう。