東京アカデミー大阪校
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皆さん、こんにちは。東京アカデミー大阪校の公務員試験担当です。
今回は「少子化、子育て支援」をテーマに、筆記試験、論文試験対策を取り上げていきたいと思います。「少子化、子育て支援」は、今までの公務員試験においても重要なテーマとなっておりますが、それは今後も変わりありません。
日本の「少子化、子育て支援」対策は、1990年合計特殊出生率が1.57となった(「1.57ショック」)ことから重要な政策課題として位置付けられ、エンゼルプランの策定(1994年)、少子化対策推進基本方針の決定(1999年)、少子化社会対策基本法の制定(2003年)、少子化社会対策大綱の決定(2004年)と少子化社会対策が講じられてきました。その後も様々な対策がなされてきましたが、その大きな転機となったのが、2010年に策定された子ども・子育て支援の総合的な対策「子ども・子育てビジョン」です。
「子ども・子育てビジョン」は子どもが主人公(チルドレン・ファースト)と位置付け、「少子化対策」から「子ども・子育て支援」へ考え方を転換し、保育等の充実やワーク・ライフ・バランスの推進など、社会全体で子どもと子育て支援を応援する社会の実現を目指すものとなった。
この「子ども・子育てビジョン」を受けて、2012年子ども・子育て関連三法が成立し、「子ども・子育て支援新制度」となった。この新制度より、市町村が子ども・子育て支援事業計画を策定、実施(国・都道府県は実施主体の市町村を重層的に支える)することとなり、地域の実情に応じた支援の充実が図られるようになった。
・住民に身近な市町村に、子育て支援の財源と権限を一元化
・市町村は地域住民の多様なニーズを把握した上で、計画的に、その地域に最もふさわしい子育て支援を実施
「少子化、子育て支援」については、主に以下の数値の変動に関する問題が多い傾向にあります。
・出生数 ・合計特殊出生率 ・年少(0~14歳)人口 ・待機児童数
〈筆記試験〉
「1、筆記試験における過去の出題テーマ」に取り上げられる項目について、その数値の正誤が直接問われる問題は少なく、その数値の変動「増加」「減少」「上昇」「下降」の正誤が問われる問題が多い傾向にあります。
〈論文試験〉
「少子化、子育て支援」は、結婚から子育てまでライフステージに応じた幅広い取り組みがあるが、その全般から受験者が選択し考えを述べるものと、以下の京都府のように予め指定された上で考えを述べるものとあります。
○ 石川県(2021年度)
「少子化対策において重点を置くべきライフステージについて」
(中略)
少子化は様々な要因が絡み合って生じるものであることから、結婚から子育てまで切れ目のない支援に重点を置くべきだと考えますが、県としてどのような支援ができるかを含め、あなたの考えを述べなさい。
○ 京都府(2020年度)
京都府の合計特殊出生率は平成元年の1.46 から平成30年は1.29に、出生数は24,855人から17,909人へと減少し、平均初婚年齢、第1子出産年齢、50歳時未婚率は、この20年間でそれぞれ上昇している。
こうした状況の中、京都府では、子どもが社会の宝として、地域の中であたたかく見守られ、健やかに育ち、子どもの生き活きとした姿と明るい声が響きわたる社会を実現していくために、令和元年9月に「京都府子育て環境日本一推進戦略」を策定し、出会い・結婚から妊娠・出産、子育て、保育・教育、就労に至るまでの総合的な子育て支援を行うこととした。
(中略)
問1 上記の現状を踏まえ、産業・雇用分野における子育て環境の整備の課題としてあなたが考えることを、400字以内で簡潔に記述しなさい。
問2 問1で記述した課題を踏まえ、京都府が「子育て環境日本一」を実現するために、産業・雇用分野において必要とあなたが考える事業を一つ提案し、その実施上の課題や解決策、期待される事業効果について、600字以内で記述しなさい。
① 少子化社会対策大綱(2020年5月29日閣議決定)
「希望出生率1.8」の実現に向けて、雇用環境の整備、結婚支援、男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備、地域・社会による子育て支援、多子世帯の負担軽減などに取り組む。2021年度の主な取り組みは、「不妊治療等への支援」「妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援」「待機児童の解消」「男性の育児休業の取得促進」。
詳しくはコチラから⇒ 少子化社会対策大綱(内閣府)
② 新子育て安心プラン(2020年12月21日 厚生労働省)
待機児童の解消を目指し、女性の就業率の上昇を踏まえた保育の受け皿整備、幼稚園やベビーシッターを含めた地域の子育て資源の活用を進める。
(目標)2021年度から2024年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備する。
詳しくはコチラから⇒ 「新子育て安心プラン」について(厚生労働省)
③ 改正育児・介護休業法(2022年4月から順次施行)
改正の主なポイントは、
・男性労働者が子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業が取得できる。
・男女とも育児休業を2回まで分割して取得することが可能となる。
詳しくはコチラから⇒ 育児・介護休業法について(厚生労働省)
④ 経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2021(2021年6月18日閣議決定)
「グリーン」「デジタル」「活力ある地方創り」「少子化対策」が日本の未来を拓く4つの原動力とし、「少子化対策」においては、「少子化社会対策大綱」等に基づき、「希望出生率1.8」と結婚、妊娠・出産、子育てを大切にするという意識が社会全体で深く共有され地域全体で子育て家庭を支えていく社会の実現を目指すもの。
詳しくはコチラから⇒ 経済財政運営と改革の基本方針2021(内閣府)
※上記最新時事より、「少子化、子育て支援」における現状の重要な課題は、
・待機児童の解消
・男性の育児休業の取得促進
男性の育児休業取得率 (目標)2025年度30% (現状)2020年度12.65%
○ 厚生労働省の調査によると、2021年4月1日時点の待機児童数は5,634人(対前年▲6,805人)と待機児童数調査開始以来、3年連続で最少となる調査結果となった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症を背景とした利用控えもあり、保育ニーズは再び増加する可能性はある。これまでの取り組みにより待機児童を解消した、或いは待機児童がわずかとなっている自治体も多く、今まで以上に細やかな支援が求められるが、どのような取り組みが必要か、あなたの考えを述べなさい。
○ 男性の育児休業の取得率は、2015年度の2.65%から2020年度12.65%と10ポイント増加しているが、決して高い数値とは言えない。少子化社会対策大綱(2020年5月29日閣議決定)では、2025年度に30%の取得率とすることを目標としているが、男性の育児休業取得における課題をあげ、その解決策を述べなさい。