東京アカデミー高松校
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こんにちは、教員採用試験対策の予備校、東京アカデミー高松校の教員採用試験対策担当:石井です。
今回は10/13に行われた第8回中央教育審議会教育振興基本計画部会で出された会議資料をもとに、次期教育振興基本計画を適切に読み解くために必要な用語についてピックアップし、意味や押さえておきたいポイントをまとめたいと思います。
「第3期教育振興基本計画」について筆記試験で頻出であったのは、『Ⅲ.2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項』と『Ⅳ.今後の教育政策に関する基本的な方針』の2つの章についてですが、今回の資料ではⅣに該当する部分は章の順番が変化しており、『Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針』とされていました。また、Ⅲについては今後議論されていく様子で、今回は記載されていませんでした。そこで、『今後の教育政策に関する基本的な方針』の部分を比較してみると、
【第3期教育振興基本計画】
という基本方針が、
【次期教育振興基本計画】
という5つの基本方針へと変化しています。この変化を踏まえて、押さえておくべき用語についてまとめます。
≪日本型ウェルビーイング≫
今回の会議では「ウェルビーイング」について、獲得的な幸福を重視する欧米的な文化的価値観に基づくものと、日本を含むアジアの文化圏の子供や成人のそれを比較し、「我が国においては人とのつながりや思いやり、利他性、社会貢献意識などを重視する協調的な幸福感がウェルビーイングにとって重要な意味を有しており、獲得的幸福と協調的幸福とのバランスを取り入れた日本型ウェルビーイングの実現を目指す」としています。欧米的ウェルビーイングと日本型ウェルビーイングを比較した際取り上げられている、「つながり」「思いやり」「利他性」「社会貢献意識」「協調的な幸福感」「獲得的幸福と協調的幸福とのバランス」といった言葉は、今後『定義』として用いられる可能性が十分にありますので、必ず押さえておきましょう。
≪同調圧力≫
一般的な意味としては、「少数意見を持つ人が多数意見に合わせるよう暗黙のうちに強制するもの」と捉えられています。資料の中の言葉を借りると、「組織への帰属を前提とした閉じた協調性」と表現され、学校では「みんなで同じことを、同じように」することを過度に要求され、「同調圧力」を感じる子供が増えてきたことが指摘されている、と述べています。今後の理想としては、異なる立場や考え、価値観を持った人々同士が、お互いの組織や集団の境界を越えて混ざり合い、学び合うこと、これまでの同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方に過度にとらわれないことが重要であるとされています。
≪アントレプレナーシップ教育≫
資料の中では「起業家精神教育」と翻訳されており、定義の詳細は示されていないのですが、言葉のイメージ通り、起業家に特有の資質と捉えることは避けた方が良いと思われます。大学においては、起業家による体験談の講演等の実施や、経営戦略・マーケティング・組織論等、経営に関する知識の教授など、アントレプレナーシップ教育が実施されていることもあり、そのような捉え方をしてもよいかもしれませんが小中高においては、キャリア教育の「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」といった面を踏まえ、「児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てるため」という目的に沿った捉え方をすることが重要だと考えます。発達段階や学校段階を接続的に捉え、各段階で育成してきた児童生徒の資質能力が次の段階ではどのように生かされていくか、というビジョンを持つことを重視するとよいと思われます。
今回は、「日本型ウェルビーイング」「同調圧力」「アントレプレナーシップ教育」についてまとめてみました。次回は、教育DXやその後の議論を経て発表される資料についてまとめる予定です。まだ少し先の話ですが、次期教育振興基本計画は次の学習指導要領を作るにあたっての土台になりますので、これから教師を目指す方にとっては、現場で役立つ教育の見方、考え方がそこにある!と思ってしっかり見ておくとよいでしょう。
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