東京アカデミー高松校
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こんにちは、教員採用試験対策の予備校、東京アカデミー高松校の教員採用試験対策担当:石井です。
今回は、12月13日に公表されました『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について』を見て回答づくりを行う際の注意点をお伝えしたいと思います。
1.前回と今回の違いについて
2.特別な教育的支援を必要とする児童生徒の捉え方
文部科学省の発表を見ると、平成24年の調査は『通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査』であるのに対して、令和4年の調査は『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査』となっています。ポイントは「発達障害の可能性」という言葉が削除されている点です。つまりこの調査の大前提からして違いがあるため、例えアンケートの内容が、
(1)「Ⅰ.児童生徒の困難の状況」
質問項目に対して学級担任等が回答した内容から、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒の困難の状況。
(2)「Ⅱ.児童生徒の受けている支援の状況」
1.質問項目に対して学級担任等が回答した内容から、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒の受けている支援の状況。
2.質問項目に対して学級担任等が回答した内容から、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒のうち、校内委員会において、現在、特別な教育的支援が必要と判断された児童生徒の受けている支援の状況。
と前回とほぼ同じであっても単純にその項目を比較してはいけない点に留意が必要です。また、調査の目的も、
平成24年:本調査により、通常の学級に在籍する知的発達に遅れはないものの発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒の実態を明らかにし、今後の施策の在り方や教育の在り方の検討の基礎資料とする。
令和4年:今後もインクルーシブ教育システムの理念に基づいた特別支援教育を推進するためには、現在の状況を把握することが重要である。そのため、本調査により、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の実態と支援の状況を明らかにし、今後の施策の在り方等の検討の基礎資料とする。
と違いが明確であり、平成24年の調査結果から『発達障害の「可能性」のある児童生徒は、通常の学級に6.5%在籍している』という推計と、『知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒数の割合:8.8%』を単純に比較してしまい、『発達障害の「可能性」のある児童生徒は、通常の学級に8.8%在籍している』や『発達障害の「可能性」のある児童生徒は、通常の学級で増加している』といった結論を、安易に出すのは避けた方がよいといえます。
では、今回の調査結果を受け、どのように捉えていけばよいか、いくつかあるその答えのうち、一つの方向性として、「生徒指導提要(改訂版)」にある『多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導』を参考にしてみてはいかがでしょうか。特別な教育的支援が必要な場合、その要因となることがあればそこに目を向け、「個別最適な学び」につながる配慮を行う、課題の解決に向けて取り組む、などのことをイメージすれば、実践的な意見づくりに繋がると思われます。
例えば、2022年夏の試験でも多く出題されていた「ヤングケアラー」について、その家庭環境から特別な教育的支援が必要であれば、福祉機関との連携を意見に組み込み、自分の教育の在り方を述べることは良い印象を与えると考えます。他にも、「その実態を正しく理解するため、日頃から支援に係る研修に参加する」「単純に家族ケアを「悪いこと」とし、ヤングケアラーを「かわいそうな子」と捉えるのではなく、家族ケアの価値を認めつつ、子供の声をよく聞き、気持ちに寄り添う姿勢を持つ」といったような表現が「生徒指導提要(改訂版)」に掲載されており、意見づくりに非常に役立ちます。
これまで「インクルーシブ教育」は「特別支援教育」とセットで考えられることが多くあり、少なからず「インクルーシブ教育=障害を持つ児童生徒の教育」と捉えている方がいると思われます。完全に間違いではありませんが、この多様化の時代において、「インクルーシブ=あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う(ヒューライツ大阪 HPより抜粋)」という言葉に原点回帰し、「あらゆる人」(特別な教育的支援を必要とする児童生徒を含む)について様々な角度から捉えていくことが大切ではないでしょうか。
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