東京アカデミー京都校
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みなさん、こんにちは。東京アカデミー公務員担当です😸
今回は「交通」をテーマに取り上げていきたいと思います。都市部での日常的な渋滞、駐車場不足、路上駐車や排気ガスなどの環境問題、過疎地でのマイカーを持たない人の移動手段の確保、高齢者ドライバーによる事故などの交通・移動をめぐる様々な問題が近年取り上げられています。これらを解決するために、スマートフォンひとつで自由に移動できる新たなサービス「MaaS(マース)」が注目されています。
◯MaaS(マース)とは
「MaaS(Mobility as a Service)」とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです。
従来の交通サービスの利用方法では、利用者が出発地から目的地までの道順を検索し、鉄道、バス、タクシー、カーシェア、シェアサイクルなど様々な交通サービスから、どれを使うのかを選び、それぞれの交通機関ごとに個別に予約をしたり、料金を支払ったりします。一方、MaaSによるサービスでは、スマートフォンのアプリを立ち上げれば、出発地から目的地までの交通手段の検索から予約・支払いまでができ、さらには、観光案内、飲食店やホテルの予約・支払い、または病院や行政サービスなどの予約・支払いも一括して行うことが可能となります。
◯MaaSが解決する課題とは
MaaSが普及すると、交通手段の選択肢が拡大し、マイカーを持たなくても気軽に便利に移動できる環境が整備されます。さらに…
■地方における交通手段の維持・確保
高齢者の運転免許の返納も増える中、人口減少の本格化、運転者不足の深刻化などに伴って、移動手段が不足する地域が今後ますます増えていくことが懸念されています。AIオンデマンド交通※など地域の輸送サービス・移動手段の維持・確保を図りながら、MaaSを活用することで、地方でも、自ら運転することなくドア・ツー・ドアで便利に移動する環境が整備されると考えられます。
※ AIオンデマンド交通: AIを活用することで利用者予約に対し、リアルタイムに最適配車を行うサービス。定まった路線を持たず、配車予約と車両位置からAIがリアルタイムに最適な運行ルートを決定するため、乗合をしつつ、概ね希望時間通りの移動が可能となる。個々の移動ニーズに対応しつつ、低コストで一定数の人が同時に移動可能。
■都市部での渋滞の解消
ヘルシンキで普及しているMaaS「Whim(ウィム)」は、定額で公共交通機関が乗り放題になるサービス。このような移動サービスによって、利用者が最も望む交通手段が手軽に使えると、マイカーの利用者が減り、交通渋滞の緩和、駐車場不足や路上駐車、排気ガスによる環境問題などが解消されると期待されています。
○MaaSのデメリットについて
・MaaSの導入、普及に際しては、高齢者や子どもを含むすべての利用者がデジタルに対応することが望ましく、スマホを所有していない、操作に不慣れな高齢者などが取り残されてしまう可能性がある。
・MaaSの普及によりシェアリングサービスの充実や公共交通の利便性が高まると、自動車販売台数の減少に拍車がかかり、自動車メーカーに悪影響を及ぼす可能性がある。
1、過去の出題のされ方について
公務員試験では、主に集団討論や論作文の課題となることが多いです。 ★過去の集団討論・論作文をチェック!
◯大阪府(行政)論作文(2022年)
次の文章を読んで、⑴、⑵の問いに答えなさい。
MaaS とは、電車、タクシー、バスからライドシェア、シェアサイクルといったあらゆる交通機関を、ICT を用いてシームレスに結びつけ、人々が効率よく、かつ便利に使えるようにするサービスの考え方である。
⑴ 交通機関のICT 化により提供されるサービスの例を「電車」「タクシー」「バス」の中から1つ選び、交通機関特有のサービスを具体的に記載しなさい。ただし、単なる決済の電子化や予約サイトの提供などのサービスは除く。
⑵ 国土交通省では、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスを日本版MaaS と位置づけ、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものとしている。そこで、以下のア、イの問いに答えなさい。
ア 日本版MaaS の導入により、解決が期待される地域の課題について示すとともに、それがどのように解決できるか具体的に記載しなさい。
イ 複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを組み合わせてMaaS を提供するには、事業者間のデータ連携が必要となる。データ連携の仕組みを構築するにあたり検討すべき事項を2 つ記載しなさい。
◯熊本市 集団討論(2021年)
本市の道路事情は、主要渋滞箇所数等の指標が全国の政令指定都市でワーストワンであるなど交通渋滞が常態化しており、市民生活をはじめ経済活動にも深刻な影響を及ぼしている。交通の利便性を高め、熊本市をより暮らしやすいまちにするために、どのような取組が必要か、グループで話し合い、意見をまとめなさい。
2、MaaSの取り組み事例
◯北海道芽室町
北海道芽室町では2022年1月より「芽室MaaS事業」を開始。農村地区の過疎化、高齢化、公共交通の空白化が地域課題であり、農村地区の人々の市街地への移動と買い物を支援する目的で、サブスクリプション型乗合デマンドタクシーを導入しました。WEBか電話で利用の予約をして、自宅から目的地までドアツードアで送迎してくれる乗り合いタクシーです。ドライバーや商業従事者などとの連携により、買い物代行や、病院の予約代行もサービスに含んでいます。
◯沖縄県那覇市・浦添市・本部町・豊見城市
2022年2月より「沖縄スマートシフトプロジェクト」を展開しています。地域内の課題として、交通面では「渋滞緩和」「公共交通機関への分散」「カーボンニュートラル」、観光面では「感染症対策」「観光客数の増大に対するサービス提供」「各交通手段の利便性向上やキャッシュレス決済対応」、地域住民は「レンタカーによる事故増大や観光公害(渋滞・ゴミ・違法駐車)」などさまざまな問題が山積していました。そこで、トヨタグループが提供するMaaSアプリ「my route」を導入。バスやタクシー、船舶、カーシェアなどさまざまな交通サービスを「my route」アプリを介してシームレスに繋ぎ、移動の効率化・最適化を実現。交通サービスと非交通サービスを連携し行動変容を促すためのサービスを順次展開することで、沖縄県の交通課題の解決と地域経済の活性化を目指しています。今後は、自治体や観光協会、地場企業などとの連携を強化し、サービス提供範囲拡大も見据えています。
3、最新時事を踏まえた集団討論における出題予想
利用者の減少や運転手不足などが原因で、近年地方における鉄道やバス等、公共交通を維持していくことが困難な状況にあります。
地域住民の移動手段の維持、確保に向けて、
① 公共交通を廃止、縮小し、主に受益者に負担を求めるMaaSを導入する
② 公共交通を維持し、地方税の一部として「交通税」として広く県民に負担を求める
大きく2つの考えがある中、それぞれのメリット、デメリットを踏まえ討論し、グループとしての考えをまとめなさい。
○滋賀県のいわゆる交通税の導入に向けた議論
(背景)
2016年、滋賀県の5市5町を運行する近江鉄道の路線の維持が困難となり、関係自治体と協議を開始。
近江鉄道:東近江市、彦根市、近江八幡市、甲賀市、米原市、日野町、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町を走る滋賀県東部のローカル鉄道。
乗客数はピーク時だった50年余り前と比して60%以上減少、30年近く赤字が続く。
(現状)
廃止も含め検討されるが、近江鉄道の代わりに道路を拡張したり、バスを出したりした場合、今の赤字より費用がかかるという試算も出され、2024年度以降列車の運行は近江鉄道が行い、線路や駅舎などは自治体が保有する「上下分離方式」という運営方式に移行。
線路などの維持管理費が赤字の原因となることが多く、管理や修繕の費用を自治体が負担することで、近江鉄道の負担を軽減する狙い。
(自治体が負担する費用について)
「地域公共交通を支えるための税制の導入の可能性について(答申)」 2022年4月20日
「誰でもいつでも利用できる地域公共交通は、利用者のみならず、地域のみんなで支えるべきもの」とし「地域公共交通を支えるための税制」、いわゆる交通税は、「その導入可能性を検討していくべきである」という答申を受け、全国初の導入に向けた方向性にある。
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