東京アカデミー青森校
ブログ
皆さんこんにちは。東京アカデミー青森校です。
今回は、【行政学の傾向と対策】についてお話しします。
全体の出題傾向をみると、〔官僚制・公務員制度・行政改革〕、〔地方自治〕が多数出題されています。
ただし、〔アメリカ行政学〕や〔行政組織〕からも数年周期で出題されており、各理論を満遍なく学習することが望まれます。
〔行政学の定義・歴史と行政国家〕
行政学の定義に関する出題はごくまれですが、行政学の導入ともいえるシュタイン行政学はぜひともおさえておきましょう。
福祉国家や行政国家は、立法国家(小さな政府・安価な政府)との比較や
20世紀以降の行政国家化現象についてきちんと理解しておく必要があります。
選択肢の誤り方として多いのは、「行政国家は大衆の政治参加に立脚する」
「国家機能の拡大とともに大衆の政治参加が活発になった」といったものであり、明らかに行政国家の趣旨に反します。
「行政国家≠大衆の政治参加」という図式をきちんと理解しておきましょう。
〔アメリカ行政学〕
最頻出分野の一つです。最大限もらすことなく、体系的にまとめて理解しておく必要があります。
W.ウィルソン、L.H.ギューリック、C.I.バーナードなど著名な人物の業績を問う問題もしばしばみられるので、
時間・労力を惜しまずに取り組みましょう。
また、F.テイラーの「科学的管理法」やE.メイヨ―らの「ホーソン工場の実験」もよく問われます。
〔行政組織〕
日本の行政組織に関する設問が多く出題されます。特に戦前と戦後の行政組織の比較や、
国家行政組織法に基づく行政組織(省、庁、行政委員会、審議会など)からの出題が多くを占めます。
行政法で問われる場合とは異なり、それらの組織の長所や短所を論点としていることが多いです。
各自でそれぞれの組織の役割などについてまとめておきましょう。
常識的に考えて、「これはないだろう」と判断できる選択肢もよくみかけるので、
時事的なことも含めて、現在の行政組織について理解を深めておきましょう。
稟議制では、メリット・デメリットについて問う問題がほとんどで、解答に迷うような難問は少ない傾向にあります。
例えば、「上位者の指導性が強まる」「意思決定に関与した者の責任が明確になる」「決定までの時間が短くてすむ」
「欧米でみられる」など、稟議制のもつ特徴を逆にしたり、採用されていない国を挙げたりする設問が目につきます。
まずは、基本事項の理解に努めましょう。
ラインとスタッフに関しては、①ラインはドイツ陸軍の参謀本部を起源とする、
②スタッフにはラインに対する命令権限がない、という2点がポイントとなります。
〔官僚制・公務員制度・行政改革〕
M.ウェーバーの官僚制論や官僚制の逆機能、リプスキーの「ストリートレベルの行政職員」についてもよく問われます。
官僚制に関する出題は、厳格な組織構造、合理的な側面、無感情など、問われることは決まっており、
これらについて「例外として非合理的な面がある」「近年では感情的な対応をすることもある」といった誤肢が多いです。
公務員制度では、日本の公務員制度と主要国の公務員制度のどちらも問われます。
特に2018年、2020年の国家一般職試験でも出題されたように、日本の公務員制度の特徴は数年ごとに繰り返し出題がみられます。
任用制度(開放型任用制・閉鎖型任用制)、基本的人権の制限、近年の公務員制度改革など、
出題されるテーマは決まっているので、過去問を中心にしっかりと対策を立てておきましょう。
世界の公務員制度については、アメリカの官僚制やペンドルトン法、
イギリスのノースコート・トレヴェリアン報告に基づく公務員制度改革が頻出傾向にあります。
行政改革では、1962年に設置された臨時行政調査会以降の、日本の行政改革の歴史が出題の中心となります。
例えば、1983年から1993年にかけて設置された臨時行政改革推進審議会での改革提言内容が出題テーマとされたこともありますが、
細かな内容を覚えるのではなく、おおまかな改革の原則を把握しておきましょう。
さらに、時事と絡むこともあるので、最近の行政改革の動向にも注意しておきましょう。
特に近年では中央省庁改革、特殊法人改革、公益法人改革、三位一体改革、指定管理者制度、市場化テストなどがしばしば出題されています。
こうしたNPM (New Public Management:新公共経営)の考え方に基づく制度・仕組みの導入についてもしっかり学習してください。
また、構造改革特区から国家戦略特区まで一連の特区制度の仕組みや現状についてもおさえておきましょう。
2020年の国家一般職試験では、マイナンバー制度が出題されました。
マイナンバーについては、今後、マイナンバーの利用範囲が拡大する予定もあることから、最新動向をチェックして、
どのような問題が出題されても対処できるようにしておきましょう。
〔予算制度と政策評価〕
予算制度に関しては、2021年と2023年の国家一般職試験において出題されており、
日本の予算制度(編成及び決算)や会計検査院に関する問題が大半を占めます。特に2023年の国家一般職のでは予算制度から2問出題されましたので、来年ご受験の方は、目を見開いて(笑)勉強しましょう。
政治学や憲法でも出題されることがあり、憲法及び財政法の条文知識などを含めて、予算制度全体を体系的にまとめておくとよいでしょう。
また、財政事情に関する選択肢が絡むこともあるので、直近の日本の予算についても学習しておく必要があります。
もっとも、理論に関しては、問われること自体はほぼ過去に出題されつくした感があるので、過去問研究をしっかりしておくことが肝要です。
政策過程に関しては、2021年の地方上級試験や2017年、2020年の国家一般職試験で出題されているように比較的出題が多く、
地方上級試験では、C.リンドブロムの「インクリメンタリズム」から多く出題されています。
政策の立案は理想の実現を目指すものではなく、現実の差し迫った弊害を除去するために行う、
という要点さえ押さえてさえておけば、その応用で解答できる問題がほとんどです。
例えば、「あらゆる選択肢を比較・検討する」「政策の代替案をできるだけ多く提起する」などは、全て誤肢のパターンです。
また、H.サイモンの「満足化モデル」、J.マーチらの「ゴミ缶モデル」なども高い出題頻度になっています。
出題される論点も似たような内容が多いので、過去問をしっかり解いて正答肢を選択できるように学習しておきましょう。
その他、政策評価についても、日本の制度を中心におさえておきましょう。
〔行政統制〕
行政学の中で、出題の多い分野の一つです。近年では、2021年の国家一般職試験で出題がみられましたが、出題は少なめといえるでしょう。
議会による統制、裁判所による統制、各省大臣による統制など、様々な機関が行っている統制手段について確実に理解しておきましょう。
また、ファイナー・フリードリッヒ(FF)論争では、この論争の意味を理解しているかが最大のポイントとなります。
ファイナーが議会による制度的・外在的統制の重要性を主張したのに対し、
フリードリッヒは議会による制度的統制のみでは不十分であるとして、
民衆感情や科学的知識に対する機能的・内在的責任を行政官が自覚すべきことを主張したことを覚えておいてください。
同じような問題が繰り返し出題されているので、過去問に数多くあたり、実力を養っておきましょう。
オンブズマン制度では、単独で出題されるというよりは、行政統制の設問の中で、選択肢の一つとして出題される傾向が強いです。
我が国では、国レベルでの法制化が行われていないという点に注意しましょう。
〔地方自治〕
大日本帝国憲法下の地方自治制度と現行の地方自治制度の比較、さらには近年の分権化など多面的に学習する必要があります。
明治~第二次世界大戦前の地方制度では、市制・町村制・府県制・郡制の考案者(モッセ、山県有朋)が問われたり、
戦前の知事や市長の選出法が問われたりします。
特に、知事の選出法については、住民による直接公選制ではなく、内務大臣による任命制であったことに注意しましょう。
また、地方分権の動向については、新聞などでしっかりと情報収集しておきましょう。
特に、2000年代に市町村合併が頻繁に行われたことから、近年では自治体の数の変遷についてもしばしば出題されています。
シャウプ勧告と地方財政では、地方交付税交付金の不交付団体の自治体数や、
地方財政全体に占める国庫支出金の割合、地方収入に占める地方税の割合なども問われます。
「三割自治」など、比較的基本的な知識さえ持ち合わせていれば、対応可能な設問も多く、
専門試験の財政学の守備範囲でもあるので、得点は可能です。
首長と地方議会の関係では、首長に対する不信任決議と議会の解散がしばしば出題されます。
両者の関係をしっかり理解しておきましょう。
東京アカデミーでは公務員を目指す皆さんを応援しています。
現在、東京アカデミーでは、教室対面コース、オンラインコースともに随時入会を受付しております。
ご入会手続き前までの講義はアーカイブで視聴可能です。
いずれのコースも「時事問題」だけでなく、関連した知識整理も踏まえて効率よく講義を行います。
詳細は以下のサムネイルをクリックしてご覧ください。