東京アカデミー東京校
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皆さんこんにちは。東京アカデミー東京校 教員採用試験対策チューターの後藤です。
教員を目指される皆さんは、学校安全に関して学校保健安全法でその詳細が規定されており、各学校には危険等発生時対処要領と学校安全計画の作成義務が課せられていることを、セサミなどで学んでいるかと思われます。
一方で、教員個人に課せられる子供の安全上の義務などはないのでしょうか。
本日は、学校の危機管理に関して、学校事故において教員が被る責任やその法的根拠について、示していきます。
まず、「学校事故」というものは、独立行政法人日本スポーツ振興センター法第15条7項にいう「学校の管理下における児童生徒等の災害」の事を指し、詳細は疾病や負傷、死亡事案であり、それらに対して医療費や死亡見舞金など「災害共済給付金」を日本スポーツ振興センターが給付します。
この、学校事故ですが、実際に発生してしまった場合、教員が被る責任は大きく三つあるといわれています。
a.民事上の責任 :事故被害者に対する損害賠償責任である。
特に民法709条等の適用について、国公立学校の教育は「公権力の行使」とみなされるため、特別法として国家賠償法によるところとなる。
私立学校では民法が適用される。
b.刑事上の責任 :学校事故で児童・生徒が死傷した場合に、その事故を引き起こした者に対して刑罰を科すことである。
c.行政上の責任 :教育公務員が行った非違行為に対して任命権者らが懲戒処分をとる。
以上、三つの責任が存在します。
次に、学校事故に関する法的責任の対象です。
①《教員》
児童・生徒の学校における生活に対する注意義務を負っており、注意義務違反、とりわけ安全配慮義務違反が認められた場合は法的責任を被る。
また、体罰などの行為も暴力として不法行為責任がある。
②《学校の設置者・校長》
教員を監督する責任があるとともに、学校施設や設備に関して安全義務がある。
③《保護者》
④《児童・生徒》
ここでいう、教員の法的責任として、見慣れないものが出てきましたね。
その、「注意義務」と「安全配慮義務」に関しては、教員採用試験対策の参考書等で目にすることは少ないのですが、教職に就く者としてこのような義務を背負っていることを自覚しなくてはなりません。
この二つの用語の違いは、注意義務よりも安全配慮義務の方がより一層安全に関して配慮する必要があるという意味を含意している点です。
この安全配慮義務を怠ったか否かに関して裁判において大きな争点となります。
もう一点、裁判で問われるのは「予見可能性」です。これは、教員が、その事故の発生もしくは発生してしまいそうか否かということを予見できたか否か問われます。
さて、教員がどんな責任を負い、それが大きく二つの点から判断されることを見てきましたが、教員は国家賠償法という法律に守られています。
この法律があることで、学校事故が発生し、その責任が教員にあると判断されたとしても、教員は個人として賠償金を支払わず、自治体レベルで賠償金を支払うことになります。
しかしながら、自治体が教員個人に賠償金を払わせるように裁判を起こすこともできます(求償権と言います)。
○学校事故(体罰)+ 求償権行使の事例○
2012年、大阪市立桜宮高校バスケ部で、顧問教諭による習慣的な体罰を受けた生徒が自殺してしまいました。この事件の判決に基づき、市は8723万円を支払いました。また、 元顧問の男性教員は懲戒免職処分となり教職から解雇されたとともに、市は、市が遺族に支払った賠償金の半額を元顧問教諭に求めて提訴し、裁判所は市が払う予定の賠償金の半額である4361万円の支払いを教員に命じました。なお、教員は懲戒免職処分を受けたあと、2013年7月に傷害と暴行の容疑で在宅起訴され、同年9月には、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が確定しました。
一方、このような学校事故を含めた学校の安全に関して、文科省により、「学校の危機管理マニュアル作成の手引き」が平成30年に改訂されているため、皆さんにも是非ご一読いただきたいと思います。
☆ 詳細はコチラから → 学校の危機管理マニュアル作成の手引き(引用元:文部科学省HP)
注意点は、このマニュアルが、平成28年の「学校事故対応に関する指針」と平成29年の「第二次学校安全の推進に関する計画」を踏まえて、既存の各マニュアル(「学校不審者侵入時―(H14)」・登校時の犯罪被害への対応を示した、「学校の危機管理―(H19)」)を内包して大幅追記して作成されたモノであるのですが、「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き(H24)」だけはこれまで通り現行のまま活用することとされている点です。
このように、学校事故に対して、教員が被る責任が大きいため、教員を目指される受講生の皆さんには、教員採用試験で問われる問われないという観点のみならず、このような法律や裁判の争点があることを少しでも知っていただきたく、上述の内容を提示させていただきました。
現場に出た際にどのような問題が起こり得るのか考えながら勉強を進めましょう。
ではまた。