高校進路ご担当先生・保護者様向け情報
高等学校で進路指導をされている先生におかれましては、2020年度公務員採用試験の対応がひと段落つき、受験された生徒様の“最終合格”という嬉しい報告を心待ちにされている一方で、新型コロナウイルスの影響で担当される科目の授業編成変更や、それと並行して民間就職活動を行う生徒様の対応にお忙しい最中とお察しいたします。
そのような中で新3年生(2021年4月の高校3年生)に向けた進路指導はいよいよ本格化し、大学進学や就職など、それぞれの進路実現に向けた“意識づけ”を行う時期を迎えました。進学希望者においては、新型コロナウイルスの影響で学校に通学できず、遠隔講義が続いたことや経済的理由から休学・中退される方も出てきたことで、進学して何を学びたいか、また何を目指すのかを例年より深く考えさせられ、“意識づけ”のきっかけとなったのではないでしょうか。
同様に公務員を目指す(検討している)生徒様においても、“意識づけ”のきっかけを作る必要があると考えます。そのきっかけとして、試験の制度や倍率の情報(データ)を提供するだけではなく、その職種に就いて何をしたいのか、どのような仕事をしたいのかを、生徒様に問いかけてみてはいかがでしょうか。弊社の説明会においては、情報提供だけにとどまらず、意外性のある公務員の仕事や魅力(やりがい)についてご紹介し、 “意識づけ”にお役立ていただける情報(話題)をご提供しております。また、今までに弊社HPでも公務員の仕事に関する資料でも様々なタイトルをご紹介しております。
今回はそれらを基に、進路決定に役立つ“公務員の話”をおまとめいたしました。生徒様が進路を決定するうえで、“意識づけ”にお役立ていただける内容になっておりますので、ご一読いただき、ご指導にお役立ていただければ幸いです。
弊社HPにおいて、公務員の職種に関わる様々なタイトルをご紹介してまいりました。その数は11タイトル!
毎年、保護者様が子(生徒様)に“就いて欲しい仕事ランキング”の上位に挙がるのが公務員です。新型コロナウイルスの影響で雇用への影響は大きく、民間企業への就職に不安を感じられ、この傾向はより顕著になると考えられます。ですが、保護者様が“就いて欲しい”と願っても、実際に目指す生徒様が本気で“就きたい”と思うためには、公務員として働くイメージが必要です。そのイメージが持てなければ、公務員への意欲や対策が中途半端になってしまいます。
上記の通り“意識づけ”のきっかけとして、まずは生徒様に以下の公務員の話をして、公務員の仕事や魅力(やりがい)を伝えてみてはいかがでしょうか。
生徒様が公務員の仕事をイメージするうえで、活用しやすいのがTV(映画やドラマ)などの映像メディアの話です。TVの話ですので、見た(聞いた)時の感動や惹きつける姿は生徒様にとって魅力的に思えますし、多くの方は興味を持って聞いてくれてイメージも湧きやすくなります。また、合わせて関連した仕事を紹介することで、興味がなかった生徒様にも“就きたい”と考えるきっかけにすることもできます。
例えば、平均視聴率30%を超えた「半沢直樹」〔銀行行員(バンカー)を描いたドラマ〕の話では、国家公務員の仕事の話をすることができます。ドラマに登場する金融庁検査員(国家公務員)は『ファイトまんまんよっ』などオネエ口調・顔芸が印象的でしたが、銀行(企業)内の検査や厳しい指摘・指導を行い、最後には桃太郎の助太刀をする動物のごとく、不正を摘発しました。そのような仕事は、大学卒業程度の方たちだけと思われてしまいますが、高校卒程度の国家一般職採用試験採用省庁一覧には「内閣府金融庁」があり、最終合格・内定を勝ち取れば、将来的には同じような仕事に就くことも夢ではありません。
他にも、海上保安庁の特殊救助隊の熱き姿を描いた映画・ドラマ「海猿」は、海上保安官の試験(海上保安学校学生)にブーム(受験者増加)をもたらしました。映画やドラマでは、海難救助や不審船の警戒などがメインに描かれていますが、その話だけではなく、船上での待機中の調理を担当する「主計」という仕事を合わせて説明をすることで、興味がなかった生徒様の気を惹くことができます。実際、最近の受験する生徒様の中には、女性だけではなく男性も調理を担当する「主計」の方に興味を持って受験する方もおります。
このように、まずはTV(映画やドラマ)などの映像メディアの話題を活用して、“意識づけ”のきっかけにされてみてはいかがでしょうか。
生徒様が最も目にするのが、市(区)役所の窓口などで書類手続きを行う姿や、TVで犯人を逮捕する刑事の姿など、目にする姿や情報が限られたものでしかなく、公務員として働くイメージも膨らまず、実際に“就きたい”と考えることが少ないのが現状です。「半沢直樹」の名言にもありますが、『大事なのは、どこで働くかじゃない。どう働くか』です。そこで公務員の仕事のイメージについて、魅力的なものをご紹介します。
「“今どき”の〇〇はさぁ…」と古今を表す言い方があります。上記の公務員の働く姿が、決して古いという訳ではありませんが、生徒様が持つ公務員の仕事に対するイメージをアップグレードするため、以下のような公務員の話で「“今どき”の公務員はさぁ、こんな仕事をしているんだよ!」と、以下の公務員の話をして生徒様に興味を惹かせてみてはいかがでしょうか。
この話をすると「公務員が営業するの?」と、まずは意外性で生徒様を惹きつけることができ、更には地方創生の取り組みに興味を持たせることができます。
愛媛県では2012年度から“愛の国えひめ営業本部”を設置しています。愛媛県の地域経済活性化のため、情報発信力・売る力が弱い中小企業の支援として、ものを売る機能を持たせるべく設置されました。愛媛の農林水産物をはじめとした愛媛県の優れた食品や「すご技」などの県内企業の高い技術力に裏付けられた製品の販路拡大に向けた商談会の開催、そして「売れる商品」づくりのサポート、県産品や県内企業の優れた技術力に関するデータベースを作成し、情報発信に取り組んでいます。
当時県庁内で営業という概念がない状況で総合商社出身の知事が「ビジネスとは」「商談とは」というところからレクチャー。営業・民間の感覚や視点が職員に浸透してきているそうです。
今や各地方公務員が、自治体の有形・無形の財産・資産・資源などを最大限活用し、そこに住む人と協力し、また、大学や企業などの関係機関と連携し、自治体の将来を豊かにする仕事に取り組んでいます。「地方自治体の職員=自治体を売り込む営業マン」、地方自治体にも倒産があり得る時代、これから地方公務員を目指す生徒様にはこういった意識も必要になっていきます。
生徒様は国立大学法人等職員採用試験をご存知でしょうか。いわゆる“大学の事務”職員の仕事に就きますが、多くの生徒様は窓口で大学生の相談に対応する教務系事務職を思い浮かべ、また高等学校卒の方が職員となって大学生の対応をすることに、違和感を持たれる方もいるかもしれません〔国立大学法人等職員は、文部科学省の内部組織(機関)でしたが2002年に法人化し、その後に長期的な採用を目的とした年齢制限変更から、高等学校現役生の方も受験できる試験となりました〕。
法人化されたということは、国立大学は一つの企業のようにとらえられ、その経営状況を健全にすることも職員の大事な仕事の一つです。冒頭でも触れたとおり、新型コロナウイルスの影響で、学生募集にも影響が出ており、次年度の学校経営に大きな影響がでてくるのではないかと言われています。経営状況によっては、学校設備や人員、研究費などの削減だけではなく、産官連携や地域貢献の促進など革新的な取り組みを行うための活動(費用)も削らなければいけません。
この未曽有の状況を打開して大学を維持していくため、今や国立大学法人等職員は、大学の行事や生徒の管理をする“大学の事務”職員の仕事だけではなく、時代に合わせ、創意工夫を重ね、企画し、立案し、実行する “経営(企画)力”を必要とした仕事が増えています。
そして、日本を支える医療や科学などの発展に貢献するため、教授の技術研究サポートや、学術交流・留学生を受け入れる国際交流のサポートなど、多岐にわたる国立大学が担う役割を充実させ、大学ブランド力を上げ、日本を支える優秀な卒業生を輩出し続ける仕事は、生徒様にとっても魅力あふれる仕事と言えるのではないでしょうか。ぜひ、そういった仕事(試験)もあると紹介し、生徒様の視野を広げていただければと思います。
公務員の公安職は、法律などの権限(かつ国家基盤)の元、犯罪や災害から人の命や財産を守るため、日々パトロールや訓練を行い、また有事の時には出動・沈静化するなど“体”が資本となる仕事です。ですが、今や犯罪や災害は複雑化・甚大化し、“体”だけでは解決できない事態もあり得ます。犯罪や災害に対し、事前に情報を“分析”しておくことで、被害を最少限に抑えることに繋げることができます。
例として、刑法犯認知件数をご紹介します。刑法犯とは、刑法および暴力行為等処罰法などの法律に規定されている殺人・強盗・放火などの犯罪のことで、警察庁より公表されている「日本における警察活動」をまとめた『警察白書(2019年)』によると、日本の刑法犯罪認知件数は前年に引き続いて戦後最少を更新したと記載があります。そして、その記載(文章)には「分析」という言葉が各所にちりばめられています。
中でも「ひったくり犯」に対しては、これまでの被害情報を集積、犯罪が多くなりやすい時間帯や場所などの傾向を分析して、それを基に重点的にパトロールや啓発活動を行っています。その成果として「ひったくり犯」は、2002年をピークに16年連続で減少し続けています。
今後も日本の治安を改善・維持していくため、複雑化する犯罪を“分析力”によって被害を最少限にする時代がきています。体育会系の部活動をされている生徒様の中には、鍛えた体を活かす仕事に就きたいと受験される方も多いかと思いますが、体だけではなく、頭も使う仕事のイメージを持たせることで刺激となり、勉強に取り組む姿勢も変わるのではないでしょうか。
上記以外にも、新しい時代に合わせた、新たな機関への採用が見られます。国家一般職高卒程度の採用先出先機関に、2020年度から関東事務局管内では、環境省の「原子力規制庁」にて採用が始まりました。また、大卒程度では、同管内にて「カジノ管理委員会」の採用も行われています。今後、デジタル庁始め、新しい時代に合わせた新しい機関での採用が開始されることが予想されます。
上記でご紹介した公安職のように公務員の仕事は、成果として“数字(ランキング)”に表れます。最後にその“数字(ランキング)”を利用した生徒様の気を惹く“公務員の話”をご紹介します。
総務省が集計しているデータに「県民のスポーツ年間行動者率」を示したものがあります。これは学校での体育の時間やスポーツ選手が職業として行う時間ではなく、個人でどれくらいスポーツをしているかという統計です。
順位 | 都道府県名 | スポーツの年間行動率(10歳以上) 単位:% |
---|---|---|
1位 | 東京都 | 68.6 |
2位 | 滋賀県 | 67.9 |
3位 | 埼玉県 | 66.9 |
4位 | 神奈川県 | 66.1 |
5位 | 千葉県 | 66.0 |
ずらりと首都圏の東京都・埼玉・神奈川・千葉県が並んでいる中で、滋賀県が2位に入っていることは、大きな驚きではないでしょうか。首都圏には、有料、無料のもの問わず、いろいろな運動施設、それも大人数を収容できる施設が多数あって、交通網も発達しているので、行動率が高いのは容易に想像できます。
そんな中、滋賀県が2位なのはなぜでしょう。
日本最大の湖である琵琶湖があるからでしょうか。もちろんそれだけではなく、豊かな琵琶湖があっても、それをどうやって県民のために活用していくかという、具体的なビジョンと施策が必要です。
滋賀県では、日本一の琵琶湖を整備し守っていくことで、驚くほど県民に、琵琶湖が愛されており、そこでは、湖畔を散策したり、ウォーキングしたり、サイクリングしたりする歩道やサイクリングロードがとても完備されています。また、伝統ある琵琶湖マラソンやマリンスポーツなど、各種競技も盛んです。滋賀県の職員は、この琵琶湖の保全や整備に多くの情熱を注いでいることが県のHPでもよく分かります。このスポーツ年間行動率2位の結果が、例えば、滋賀県の男性の平均寿命(0歳の平均余命)の高さに表れています。
順位 | 都道府県名 | 平均余命(0歳男性) 単位:年 |
---|---|---|
1位 | 滋賀県 | 81.78 |
2位 | 長野県 | 81.75 |
3位 | 京都府 | 81.40 |
4位 | 奈良県 | 81.36 |
5位 | 神奈川県 | 81.32 |
滋賀県の職員にとって、琵琶湖を守ることが、県民の健康に繋がる一助であることを、やりがいとして、日々、仕事をされているのかもしれません。健康を促進する方法は、スポーツだけではありませんが、環境、福祉、文化、スポーツ、娯楽など、あらゆる面で、国民、県民、市民の豊かな生活環境を整えるのが、公務員の重要な仕事であり、ランキングのような結果として表れれば、やりがいもひとしおだと思います。
このように、各種統計データを見ることで、それぞれの仕事のやりがいや魅力が見えてきます。
「住みやすさランキング」
「交通事故が少ないランキング」
「大学進学率が高いランキング」
「図書館の利用率が高いランキング」
「公園の数ランキング」
「下水道完備率ランキング」
「外国人観光客数ランキング」
「重要文化財数ランキング」・・・。
公務員になったら、どのランキングをどうやって上げていくか、仕事のイメージややりがいを伝えることによって、生徒様の“意識づけ”のきっかけにされてみてはいかがでしょうか。
今回は『進路決定に役立つ“公務員の話”』をテーマに、弊社の説明会やHPでご紹介してまいりました資料を基に、進路決定に必要な“意識づけ”に役立つ“公務員の話”をご紹介いたしました。東京アカデミーの指導方針の一つは、「合格することだけが目標」ではなく、「合格は当たり前、採用後、活躍すること、やりがいが持てること」を目標にしています。高等学校の先生方におかれましても、説明会や相談対応の際や、公務員のご指導に当たられる場合にも活用できる内容に編集しておりますので、是非ともご活用いただければ幸いです。
最後になりますが、高等学校で進路指導にあたられる先生方にとって有益な情報をご提供できればと思い作成して参りました当HPですが、おかげ様でシリーズの最終回を迎えました。弊社は今までも!そして、これからも!進路指導にあたられる先生方と連携をとり、生徒様の夢の実現に向け、精進し、最終合格を全力でサポートいたします。今後の掲載していくHPシリーズともども、ぜひ弊社を継続してご利用くださいますよう、お願い申し上げます。