高校進路ご担当先生・保護者様向け情報
高校新卒者の就職内定率は、令和3年3月末時点で依然として99.1%という高い水準を保ってはいるものの、求人数は昨年度より20.2%減で、特に宿泊業、飲食サービス業の求人数が減っている状況です(厚生労働省『高校・中学新卒者のハロワーク求人に係る求人、求職、求職内定状況』より)。コロナ禍においては、その他の業種でもその影響が徐々に現れ始めているため、就職はしたものの本来希望した業種ではなかった、ということは今後起こり得ることです。
このような中で、“安定”した仕事と言えばやはり公務員ですので、就職希望者の中でも民間から公務員へ進路を変更される方が増えると予想されます。そこで、今回は公務員にはどんな仕事があるのか、業種や職種について詳しくご紹介させていただきます。
高校2年生の方にとっては、今秋頃には本格的に進路を決定し、将来を見据えていろいろな準備を始める時期に差し掛かってくるかと思われます。高卒程度公務員の一次試験はその多くが9月実施ですので、現役合格を目指すならば、進学される方よりも早くに準備を始めなければなりません。一言で“公務員”といっても、その職種や業務内容は様々です。自分が“どんな仕事をしたいのか”、“どんな仕事に向いているのか”、“どういう風に働きたいのか”などを良く考えた上で、後悔のない進路を選ぶ際の一助となれば幸いです。
公務員の魅力は何といっても、その仕事の内容にあります。民間企業が利潤を追求し、社員は会社の業績向上を目的とするのに対し、公務員は社会全体の奉仕者として公共の利益を目的とします。公務員は予算という制限の中、良心的な立場からいかに国民・住民のために貢献できたということに喜びや満足を見出すことができます。また、公務員の仕事は地域の住民生活や産業に密着した業務から、長期的な視野に立った国家規模の仕事まで幅広く多岐にわたっており、各個人の能力、適性が活かされる職種です。また、社会にとってなくてはならない仕事という事実は、大きなやりがいと言えます。尊敬や感謝の念を込めた呼称としてエッセンシャルワーカーが使われるようになった点も、公務員の志望意欲に繋がってくるはずです。
2020年度は、新型コロナウイルスにより日本経済の落ち込みは避けられませんでした。
公務員は官公庁が景気に左右されることはなく、その身分・待遇は法律で保障されています。景気の動向が不安定なこの時代、公務員こそが安心して仕事に打ち込むことができる職業です。
従来、民間給与の引き上げに伴い、公務員給与も引き上げられてきました。近年は厳しい景気動向の下、民間企業においては様々な給与抑制の働きがあり、極端な場合は大幅な賃金カット等が行われている場合もありますが、だからといって公務員給与について極端な措置が実施されることはありません。また、定年後の退職金・再就職等においても民間企業に比べ優遇されており、民間企業の従業員に比べて確実な生涯設計を立てることのできる職業といえるでしょう。
公務員においては、完全週休二日制がほぼ100%実施されており、民間企業の完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合58.0%(2020年/厚生労働省)を大きく上回っています。年次有給休暇も年間20日間与えられ、その平均使用率も民間を超えるものです。さらに「病気休暇」、「介護休暇」、「特別休暇」、「ドナー休暇」、「ボランティア休暇」、「夏期休暇」等があります。
公務員は、採用、給与、昇進、職務あらゆる面で男女平等です。本人の実力次第で管理職への道も開かれています。また、産休(産前6週間・産後8週間)と育児休業制度(子供が満3歳になるまで)があり、安心して結婚・出産することができます。さらに産休中は有給であり、経済的にも優遇されています。
公務員はある一定の条件を満たすと、国家資格を取得できたり、試験科目の一部が免除されたりします。将来や定年後を考えて、仕事をしながら資格取得を目指す人が多い中、公務員はその職務の専門性から必然的に各種資格の取得へと近づくのです。
憲法により「全体の奉仕者」と規定され、公のための仕事に携わる公務員は大きく国家公務員と地方公務員に分けることができます。 国家公務員は、一般職と特別職があり、裁判所職員、国会職員、防衛省の職員等は特別職、それ以外の全ての職員は一般職とされています。
国家公務員の採用試験の場合、その多くは学歴制限を設けていないため、短大生・大学生を問わず年齢基準さえ満たしていれば、受験することができます。試験日は全国共通で、9月初旬に実施されます。
・国家一般職 ・税務職員 ・裁判所職員一般職
・刑務官 ・海上保安学校学生
・入国警備官 ・皇宮護衛官
地方公務員の採用試験の場合、年齢基準に加えて学歴制限が設けられているケースが多く、一般的に大卒者(見込者)は受験できません。試験日程は各自治体によって異なりますが、9月の実施が多いです。
・都道府県職員 ・政令指定都市職員
・市町村職員
・警察官 ・消防官
公務員は仕事の内容から、大きく分けて2つの職種に大別されます。都道府県庁や、市区町村の役所・役場で事務的な仕事をする「事務職(行政職)」と、警察官や消防官といった住民の安心・安全を体を張って守る「公安職」に分かれます。
では、やりたい仕事をどう見つければいい?と考えるときに、特に公務員の仕事内容をイメージできず悩んでしまう方も多いかと思います。そこで重要になってくるのが、「自分がやりたいのは事務職か、公安職か」だけでなく、「どの自治体のどんな仕事で活躍するのか、また、国家公務員のどんな職種で自分を活かすのか…」といった、「公務員」から一歩踏み込み、より具体的に検討していく作業です。「自分の○○な特性を活かして活躍したいから、どの自治体(国家公務員の場合は、どの省庁)を受験する」といった選択が肝心です。
「やりたい仕事を見つける=自分の特性を活かして活躍できる職場を見つける」といった職種研究が、最終的に試験合格へと繋がります。面接試験では、ライバルたちに負けない熱意を試験官に伝えるため、「自分には〇〇という長所があります。××の職種であれば、その長所を発揮して活躍していけると考えました…」と受験者はアピールしなければならないからです。つまり、職種研究と自己分析は合否に直結する作業であり、そのスタートラインに立つための作業が「やりたい仕事を見つける」ことなのです。その結果、40数年間働くであろう社会人としての人生も、とても有意義でやりがいのあるものになると考えます。
異動で職域が変わることも多い地方公務員と異なり、入った省庁で最後までキャリアを積んでいくため、特定の分野のスペシャリストを目指すことができます。1つの分野を極めたい方、大規模な企画や運営に携わりたい方、長期間かけてじっくりと業務に取り組みたい方にはおススメです。1つの趣味や興味、関心のあることやモノに没頭し、続けることができるタイプの方には向いていると言えます。
〈国家一般職〉
国家一般職は最終合格後、各省庁での業務説明会・採用面接等を経て採用され、1府12省庁ならびにその出先機関で働きます。国会や選挙の対応で忙しい時期もありますが、国家公務員の業務は国民・国家全体に影響するものですから、大きなやりがいを感じられるでしょう。
国家一般職の主な採用出先機関の一部をご紹介
国家公務員=全国転勤のイメージですが、採用機関によっては原則地方(申込時の地域内)転勤に限られる場合が多いです。国家一般職の採用官庁につきましては毎年更新され、9月中~下旬頃に人事院地方事務局HPに採用情報が掲載されます。希望する官庁の採用情報は見逃さないように注意が必要です。
〈税務職員〉
適正公平な課税を維持するため、職員が直接、個人事業者や会社等を訪れその帳簿などを検討し、適正な申告が行われているかどうか調査や検査を行います。また、租税収入を確保するため、定められた納期限までに納付されない税金の督促や滞納整理を行います。全国の国税局や税務署で税のスペシャリストとして、いくつかの部門に分かれ、次のような業務を行います。
〈裁判所職員一般職〉
裁判を円滑に行うためのサポート業務を行う裁判部門と、裁判所の運営を人的・物的両面から支える司法行政部門に大別されます。裁判所職員一般職の試験は、採用人数が少ないこともあり、国家公務員の中でも難関で、例年最終倍率が20~25倍程度となります。
採用となる都道府県・市町村内での転勤や部署移動が、3~5年のサイクルで行われます。色々な業務に携わることが多い地方公務員は、ゼネラリストであることが求められます。幅広い知識やスキルを身に付けたい方、異動先での新しい出会いや業務内容に魅力を感じる方にはおススメです。いろいろな趣味や分野に興味、関心を持ったり、いろいろなタイプのお友達と交流したりするのが楽しいと思うタイプの方には向いていると言えます。
〈都道府県職員〉
都道府県庁が業務の対象とする都道府県は、面積・人口など様々な面で市町村に比べ大きな自治体です。都道府県と市区町村の業務は同じ分野に関係していることが多いですが、その中でも得に、各自治体から上がってきた調査結果の取りまとめや2つ以上の自治体に跨る事柄(河川や道路など)を担当しています。それぞれ異なる事情を持った自治体や国・企業などの様々な団体の意見を調整しつつ、行政を運営していく必要がある職業です。
それぞれの都道府県によって違いはありますが、募集は職種ごとで、一般事務・警察事務・学校事務などの事務職、土木・電気・機械などの技術職、警察官などに分かれています。
〈市町村職員〉
それぞれの「街」の行政を担い、住民生活を向上させたり、観光や産業を盛り上げるため取り組んだりするのが市区町村の職員です。住民にとっても最も身近な公務員で、書類が必要な時や、行政サービスについて尋ねたいとき、相談に訪れることも多いと思います。業務として街の進行や都市計画の立案、子育て支援・生涯学習のイベント運営などを行う他、婚姻や出生の届出など、市民一人ひとりの人生の節目に立ち会うこともあります。行政の仕事ぶりによって街にも様々な変化が生まれますので、成果を肌で感じることができるのも特徴です。
それぞれの市区町村によって違いがありますが、募集は職種ごとで、一般事務・技術職の他、保育士や栄養士のような資格職、消防官などに分かれています。
警察官の仕事は地域に密着した交番勤務から国際的な行事の警備まで、私たちの一番身近なところで私たちの安全を守ってくれる心強い存在です。街を歩けば警察署や交番があり、巡回しているパトカーや白バイをよく見かけます。テレビドラマ等でも警察官の仕事にまつわるものは多くあり、命を守る公務員の仕事について考えた時にイメージが湧きやすいのではないでしょうか。警察官は都道府県ごとの採用となり、それぞれの自治体によって若干の違いはあるものの、仕事内容に応じて下記のいくつかの部門に分かれています。
消防官といえば、燃え盛る炎の中から人命をその手で助け出したり、ポンプを支え消火活動を行ったりすることがまず連想されます。消火活動を行う以外にも、建物内の防火設備の管理状況の検査、町内会への防災訓練の指導、地震や台風発生時の災害現場への出動・人命救助、救急車で駆け付け応急処置や病院への搬送を行うなど、その業務は多岐にわたります。消防官は市町村ごとの採用となり、それぞれの自治体でその職務に応じて様々な部門に分かれています。下記がおおまかな仕事内容です。
海上保安官は、「海の警察」として、日本の海域を巡視船や航空機を使って監視し、海の治安と安全を守る仕事です。国土交通省所管の海上保安庁に所属する国家公務員です(海上自衛隊は防衛省所管の特別国家公務員)。世界有数の海洋国家である日本の海を守るため海上保安官がゆるぎない使命感を持って様々な職務を遂行しています。日本の排他的経済水域(領海漁業や天然資源開発を他国に邪魔されず行える範囲)は世界10位以内という広さです。この広大な海域を11の管区に分けて守り続けています。以下が主な仕事内容となります。
天皇や皇族の護衛、皇居や御所などの警備にあたります。皇居の真ん中にある皇宮警察学校で10か月の研修後、皇居・御所の警備を担当する護衛署(一般の警察署)に配属され、3か月の職場実習を行います。次に再度皇宮警察学校で3か月の研修後、5か月の実践演習を経て晴れて一人前の皇宮護衛官となり、本格的に護衛警備業務に従事することになります。皇宮護衛官は以下の3つの部門に分かれて職務にあたります。
法律に違反する外国人に対して厳正に対処し、日本の安全と国民生活を守り社会秩序を維持することが業務です。国際交流が活性化する中、世界各国から多くの人々が日本を訪れています。その目的は様々ですが、中には観光などの目的を装って入国し、犯罪に走る外国人や、不法就労を行う外国人もいます。このような状況に対応するためにも、入国警備官の重要性がますます高まっています。入国警備官の業務は以下の通りです。
今回は「公務員のお仕事」という内容で、具体的な仕事の中身についてご紹介させていただきました。公務員には、色々な職種があり、上記にご紹介させて頂いた仕事はほんの一部に過ぎません。まだまだ知られていない公務員の仕事もたくさんあります。高校2年生という、今後の進路を決めるうえで大事な今だからこそ、じっくりと職種研究などに時間を費やし、本当に興味を持てる仕事、長所を生かせる仕事、客観的に見て向いている仕事など、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。今後の長く続く社会人人生を思えば、何といっても自分の仕事にやりがいを持てるかということが、一番重要なことです。早い時期に、将来への目標を立てそれに向けて準備を進めていきましょう。
2021年度のシリーズも今回で最後になります。東京アカデミーでは、全国32拠点での講座提供だけではなく、様々な形態で教育サービスを提供しております。精鋭講師陣による筆記試験対策の“生講義”だけではなく、面接においても受講生一人ひとりの特徴に合わせ、20歳代から50歳代、60歳代の面接指導担当者まで幅広い視点での指導を心掛けています。全国の拠点で最終合格まで徹底的に責任指導をしており、試験に関して膨大な情報量を蓄積しております。また、直接、高校へ出向いての公務員説明会の実施やオンラインでの実施などのご協力も少なくありません。生徒様の進路指導において、お困りのことがございましたらお近くの校舎までご連絡ください。来年度もこのHPにて色々な公務員情報を提供させていただきますので、進路指導の際に今後もぜひご活用ください!