高校進路ご担当先生・保護者様向け情報
高等学校の先生方におかれましては、新学習指導要領の導入に伴い、各教科のご指導において「持続可能な作り手の育成」を進めていかれることと存じます。特に新設される「公共」の中では、国連のSDGs(持続可能な開発目標)など社会的に注目される問題を通じて、生徒様それぞれが考えをまとめ話し合いをする機会が増えることと推察いたします。
既知の事実でございますが、このSDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、「誰一人取り残さない」持続可能な社会を実現するために2015年の国連サミットで採択された2030年を期限とする以下の「17の国際目標」です。
以上、17の目標がございますが、SDGsをワンフレーズでまとめると、
『世界中の様々な問題(貧困・環境・人権・差別・労働・資源・平和など)を2030年までに各国で改善・解決しましょう』
という計画や目標になります。これは全193カ国によって採択され、日本政府はSDGsへの取り組みを促進するために、総理大臣を本部長としてSDGs推進本部を2016年5月に新設しています。
実は、このSDGsは、今後の公務員試験においても、カギを握るテーマの1つになると予想しています。
直近の公務員試験に「SDGs」がどのように問われているのか、実際の公務員試験の出題例から、今後の公務員試験で必要になる知識を予測していきます。
SDGsは上記の通り、日本政府が推進する国際目標のため、公務員の仕事に深く関わり、公務員試験でSDGsに関する問題や課題が出題されている現状から、今後の公務員試験でも問われる可能性があります。また、SDGs達成は民間企業や組織も対象になるため、様々な就職試験(作文試験・面接試験)でも同様のことが言えます。
①教養試験(マークシート方式)での出題
公務員の教養試験科目の中でも、特に「社会科学」や「時事」の科目としてすでに出題され始めています。
【2021年度の地方公務員初級公務員試験(9月26日実施)】
持続可能な開発目標(SDGs)に関する次の記述ア~エの下線部分のうちには妥当なものが二つある。それらはどれか。
SDGsは、2015年の国連持続可能な開発サミットで採択された、2100年を達成年限とする国際目標である。
SDGsの目標は、極度の貧困の半減や普遍的な初等教育の達成など,主として発展途上国向けのものである。
SDGsの目標を達成するためには、各国政府だけでなく、民間企業や市民団体、各個人に至るまで、全ての人や団体の行動が求められている。
SDGsの目標の一つに飢餓の撲滅がある。長年、飢餓に苦しむ人々への支援などに取り組んできた世界食糧計画(WFP)は2020年にノーベル平和賞を受賞した。
1 ア、イ 2 ア、ウ 3 イ、ウ 4 イ、エ 5 ウ、エ
解答 5
※受講生への聞き取りによりますので、実際の問題と相違している可能性がございます。
教養試験対策では、SDGsに関する知識はもちろん、関連事項として環境問題や国連関連の知識をつけておくことも非常に重要です。
②教養試験(記述式)での出題
熊本市など一部自治体で実施をしている時事問題の記述試験にてSDGsに関連した語句が出題される可能性があります。以下は、時事問題の記述試験を実施している熊本市で、過去3年間で実際に出題された語句になります。
〈2019年〉
キャッシュレス、G20、SDGs、5G、(1問不明)
〈2020年〉
在宅勤務、子ども食堂、サプライチェーン、ダイバーシティー、民事再生法
〈2021年〉
ジョブ型雇用、デジタル雇用、クラウドファンディング、ベーシックインカム、アウティング
※受講生への聞き取りによりますので、実際の問題と相違している可能性がございます。
赤字にしている語句はSDGsと関連が深いとされる語句になります。2019年度を皮切りに、SDGsに関連した語句が多く出題されているのが分かるかと思います。今年の試験についてもSDGsに関連した語句が出題される可能性はかなり高いと予想されます。
【SDGs関連語句一覧】
・子どもの貧困 ・相対的貧困 ・ひとり親家庭 ・こども食堂 ・フードテック ・食料自給率 ・ヤングケアラー
・超高齢化社会 ・薬物乱用 ・ワクチン ・予防接種 ・待機児童 ・ジェンダーギャップ指数 ・ジェンダーレス
・脱炭素社会 ・カーボンニュートラル ・再生可能エネルギー ・リモートワーク ・ワークライフバランス ・IoT
・コンパクトシティ ・エシカル消費 ・食品ロス ・パリ協定 ・温室効果ガス ・魚の乱獲 ・海洋ゴミ ・耕作放棄地
・生物多様性 ・メディアリテラシー ・アクティブラーニング
③人物試験(作文試験・集団討論試験・面接試験)の課題として出題
教養試験の他にも、二次試験以降で「作文試験」や「集団討論試験」の課題としてSDGsが問われる可能性があります。以下は、過去3年間で実際に地方公務員試験に出題されたSDGsに関連する課題の一部です。
《作文試験》
・北海道石狩市
2021年度 ※3題中1題を選択する形式
・国の経済回復に向けた自治体の取り組みについて。
・揺れ動くデジタル化と上手く付き合う方法
・SDGsの目標を達成するために市はどのように取り組むか述べよ。
・兵庫県養父市
2021年度 ①養父市職員として成し遂げたいこと
②養父市の今後の課題(SDGsの観点から考える)
また、面接試験では、国連のSDGsの目標そのものを問うのではなく、「〇〇市が力を入れている取り組みを知っているか」、また「最近関心を持ったニュースは何か、それについてどう思うか」等、間接的にSDGsについて話す場面が予想されます。また、「あなたは気候変動対策として、普段から努力していることは何かありますか?」など、受験生個人として日ごろからどのような意識や行動をしているかが問われることも容易に想像できます。志望先の自治体がSDGs達成に向けてどのような取組みを行っているのかを知っておくことはもちろん、SDGs関連のニュースに対して、どのように考えるのか日頃から意識をしておくことも大切です。
「公共」の授業なども取り上げていかれるのではないかと存じますが、政府の支援を得て、各自治体が取り組んでいる「自治体SDGsモデル事業」の例を、いくつかご紹介いたします。
SDGs未来都市とは⇒SDGsの理念に沿った基本的・総合的取組を推進しようとする都市・地域の中から、特に、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域として、国(内閣府地方創生推進事務局)が選定した自治体。
2018年度は全29都市、2019年度は全31都市、2020年度は全33都市、2021年度は全31都市が「SDGs未来都市」として選定されています。
1.2021年度自治体SDGsモデル事業
○北海道上士幌町 「スマートタウンで“弱点”転変!かみしほろ幸せ循環」プロジェクト
(取組概要)
次世代高度技術の社会実装によるスマートタウンの構築を進め、地域住民の生活サポートや移動の利便性向上、全世代型のコミュニケーションを活発化させ、だれもが生涯活躍のまちづくりを後押し。さらに、再生可能エネルギーの地産地消、EV自動車による空港直行便の導入で関係人口を創出、地域経済の活性化につなげる。
○千葉県市原市 化学×里山×ひと ~SDGsでつなぎ、みんなで未来へ~
(取組概要)
国内有数の石油化学コンビナートを擁する都市として、2050年カーボンニュートラルと持続的発展の両立に向け、市原発サーキュラーエコノミーを実現する。併せて、里山環境を活かしたまちづくり、子ども・若者が希望を実現できる社会構築への取組等、多様なステークホルダーとの対話と連携を通じ、誇れる未来を創造する。
○東京都墨田区 産業振興を軸としたプロトタイプ実装都市
~ものづくりによる「暮らし」のアップデート~
(取組概要)
医療、防災、高齢化など地域課題に応じ、スタートアップと区内企業との連携によりハードウェアを開発し、社会実験として地域に実装していく。そのプロセスにおける地域と企業のコミュニケーションを通し、暮らしや仕組みの中に「モノ」を埋め込み、社会課題解決と地域内経済循環を促し、持続可能なまちを実現していく。
○新潟県妙高市 みんなでつくる生命地域 Redesignプロジェクト
(取組概要)
国立公園妙高の自然環境を軸として、市民や観光客等にとって利便性と満足度の高いサービスを再設計し、提供することにより、経済・社会・環境の好循環を生み出すとともに、真の豊かさを実感でき、安心して住み続けられる「生命地域 妙高」をつくる。
○岐阜県岐阜市 山水と都市が育むWell-beingなライフスタイル創造事業
~「つかさのまち・シビックプライドプレイス」が繋ぐ人と人、人とまち~
(取組概要)
人と人、まちを繋ぐ拠点「つかさのまち・シビックプライドプレイス」から、岐阜市の山水の自然と都市の資源を融合した「ヘルスツーリズム」をはじめとする社会・環境・経済の三側面の取組を進めることにより、住む人・来る人・働く人それぞれのWell-beingに満ちたライフスタイルの実現と、都市の持続的な発展を目指す。
○岐阜県美濃加茂市 「ローカルSDGsみのかも」
=地域循環共生圏の実現に向けたソーシャルビジネス創出モデル事業
(取組概要)
市内のステークホルダーが地域特性を生かして新たな付加価値を創出し、事業化を行いながら、当事者意識を持って社会・環境課題解決に取り組むソーシャルビジネスを実現する。また、新たに生み出されるキャッシュフローで得られた利益を、市の持続可能性を高めるべく、経済、社会、環境に再投資する自律的好循環を目指す。
○京都府京都市 京都の文化が息づく3側面,“みんなごと”で取り組む レジリエンスモデル
~SDGsのその先へ~
(取組概要)
くらし、支え合い、はぐくみ、伝統と革新、精神性など、京都に息づき人々の行動様式の基となる「文化」の力が3側面の取組を支え、多様なセクターが協働し、課題解決を図る3つのプラットフォーム事業が連携することにより、“みんなごと”で取り組む市民力がSDGsの2030年の先を見据えた「レジリエント・シティ」の実現に貢献する。
○愛媛県西条市 LOVESAIJOポイントを介して「ヒト」と「活動」が好循環する持続可能なまち
西条創生事業(「西条市SDGs×西条市DX」の推進による地方創生の実現)
(取組概要)
「経済」「社会」「環境」の三側面を繋ぎ合わせる「LOVESAIJOポイント」「SDGsingメーター」を介して多くの「活動人口」が年齢や居住地を超えて繋がり合うとともに、市民参加型による自発的な環境行動の促進、少子高齢化の影響を受ける地域社会の持続可能性を高める「活動」が活性化することで、「ヒト」と「活動」が好循環する仕組みを確立する。
●出典
・【地方創生サイト】2021年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について
全国各地の自治体では、SDGsの理念に基づき様々な取組を計画し実行に向けて動き出しています。地域の活性化に繋がる持続可能なまちづくりを推進し、経済と環境の好循環の創出に向け、地域の特性を生かした独自の取組を各自治体が計画中です。公務員試験を受験予定の生徒様には、受験先の自治体がどのような取組をしているのか、それに対しての感想や関わっていきたい点などを簡潔に伝えられるよう、事前に調べを進めることをお勧めします。
SDGs達成に向けて、国(各省庁)や地方自治体、各種団体、民間企業など国家レベルから個人レベルまで幅広い取り組みが求められます。特に先導的な役割を担い、幅広い分野で施策を進める公務員の採用試験では、SDGsに関する出題は職業適性を図る判断基準の一つと言えるでしょう。
東京アカデミーでは、各地域の試験情報(作文・討論・人物など)を全国32校で収集・共有し、各校教務が担当地域の自治体のSDGsなども関連付けて指導を行います。公益性の高い職業(公務員・教員・看護師・社会福祉士など)に就く優秀な人材を多数輩出し、卒業生が各分野で活躍することで、間接的に社会貢献を果たしていくことを、理念の一つに掲げています。その理念を大切にするからこそ、毎年全国No.1の合格実績を続ける理由でもあります。
そして、最新の試験情報をもとに、貴校内での出張公務員説明会なども承っております。実施または計画をお考えの場合は最寄りの東京アカデミーまでお問い合わせください。