高校進路ご担当先生・保護者様向け情報
公務員試験で出題される時事問題とは、一般的な政治・経済・社会の知識に加えて、最近起こった社会的な出来事や世の中の流れに関する知識を合わせた問題を指します。高卒程度公務員の教養試験では、どの試験でも毎年、1~5問、時事問題が出題されており、特に国家公務員に比べて地方公務員の方がより出題数が多い傾向です。さらに、2018年度から導入された統一試験日の新教養試験では、これまでと比べて時事を重視し、社会的に幅広い分野の題材(ICT、環境問題、社会保障など)が多く出題されるようになりました(新教養試験に関しては、同HPの2019年度投稿記事:Part.04【新教養試験は何が変わった!?】をご覧ください)。今や時事対策は公務員合格に必要不可欠と言えます。今回は、過去問題から出題の傾向をつかみ、今年(2022年度)の試験で出題が予想される時事トピックスをご紹介いたします。
時事問題は幅広い分野から出題されるため、どの分野を特に対策すべきか迷うところだと思います。勉強時間が限られている貴校生徒様に効率よく対策していただくため、頻出分野をご紹介するとともに、その分野の過去問題と出題された背景についてもご説明いたします。
今回は、国家公務員一般職、地方初級公務員9月第3週(市町村職員)、地方初級公務員9月第4週(道府県・政令指定都市職員)、海上保安学校学生、裁判所職員一般職、東京消防庁消防官Ⅲ類、警視庁警察官Ⅲ類について、過去5年分の時事的要素を含む問題81問を14分野に分類しました。出題数の多かった分野を頻出分野ベスト3として過去問と一緒にご紹介いたします。
尚、東京アカデミーでは非公表である地方初級公務員の9月第3週(市町村職員)、9月第4週(道府県・政令指定都市職員)の試験については、全国の受講生からの聞き取り調査により問題を復元しております。(聞き取りのため実際の問題と相違している可能性がございます。)
絶対押さえておきたい頻出分野① 人口問題
【2020年度 地方初級公務員試験9月第4週(道府県・政令指定都市職員) 出題】
日本の人口と世帯に関する次の記述のうち妥当なのはどれか。
正答:4
近年の人口動態に関する問題はこの5年間で8問出題されています。日本及び世界各国の人口推移や総人口に占める65歳以上の割合、2020年に実施された国勢調査の最新の情報も押さえておきたいところです。同調査結果によると、日本の総人口は2011年から10年連続で減少しています。新型コロナウイルスの影響により2021年の出生率は過去最低を更新し、総人口に占める65歳以上人口の割合は28.6%と過去最高となっています。少子高齢化や人口減少は日本のみならず、先進諸外国でも問題になっているため、世界各国の人口動態を押さえておくことが必要です。
絶対押さえておきたい頻出分野② ICT(情報通信技術)
【2021年度 国家公務員一般職 出題】
情報等に関する記述として最も妥当なのはどれか。
正答:5
ICT(情報通信技術)に関する問題は過去5年間で8問出題されており、特に地方初級公務員9月第3週(市町村職員)の試験においては、2018年に教養試験がリニューアルされてから毎年出題されています。新型コロナウイルスの影響で官公庁でも民間企業でもテレワークの導入が進み、あらゆることがオンラインで行われる世の中へと急速に変化したこともあり、今後も出題の可能性が高い分野です。官公庁では行政手続きを一貫してデジタルで完結させることで行政サービスの効率化を図ろうとしていますし、学校でも一人一台端末配付でICT教育が推進されています。私たちの生活と切っても切り離すことができない情報通信技術に関するニュースをチェックしておくことは必須と言えるでしょう。
絶対押さえておきたい頻出分野③ 地球環境問題
【2019年度 地方初級公務員試験9月第4週(道府県・政令指定都市) 出題】
日本におけるごみ問題やリサイクルの取組みに関する次の記述ア~エのうちには妥当なものが2つある。それらはどれか。
1 ア、ウ 2 ア、エ 3 イ、ウ 4 イ、エ 5 ウ、エ
正答:2
ごみ問題、日本や諸外国のエネルギー問題などの地球環境問題は過去5年間で13問出題されています。ご紹介した問題であれば、東京オリンピックのメダルをリサイクル素材で作る、環境省の「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を知っていると有利な問題でした。地球温暖化による異常気象やマイクロプラスチックによる海洋汚染などの環境問題解決に向けた国際的な取り組み、日本の取り組みに関する問題も頻出ですので、要点を理解しておきたいところです。
以上、頻出分野ベスト3についてご紹介しました。①人口問題 ②ICT(情報通信技術) ③地球環境問題 この3つの分野は2022年度試験でも出題の可能性が高い分野だと言えるでしょう。様々な分野のニュースに関心を持ってチェックすることができればよいですが、高卒程度公務員試験の教養試験では17~18科目出題される(同HP、2022年度投稿記事「問題全面解剖!問題の解き方」をご参照ください) ので、時事問題の対策に多くの時間を割くことは難しいです。ご紹介の通り、頻出分野を中心に、2021年に起こった出来事の重要ポイントを整理しておくと、効率よく対策することができます。
頻出分野を押さえたところで、2022年度の試験ではこれが出る?!押さえておきたい時事トピックスを2つご紹介いたします。
◇地球環境問題(地球温暖化対策・脱炭素・プラスチック問題)
地球温暖化問題に関して2021年は、気候変動サミットやCOP26の開催、そして地球温暖化理論の第一人者である日本人研究者がノーベル賞を受賞するといった快挙もあり、地球温暖化問題に関してさらに具体的な方策を掲げて取り組んでいくことが決定された節目の年となりました。
また、2022年4月にはプラスチック資源循環促進法が施行されました。地球環境問題は、今や公務員として国、都道府県、市区町村一丸となって取り組まなければならない問題であることから、2022年9月の試験では出題が予想されます。重要ワードと大まかな流れを理解しておくと得点できるはずです。
◇デジタル庁・マイナンバーカード
新型コロナウイルス流行により、日本のデジタル化の遅れが明るみに出ました。菅政権下で2021年9月に発足したデジタル庁。行政のデジタル化、デジタル人材の育成などを官民一体となって推し進めていきます。また、マイナンバーカード事業も担当します。デジタル庁の概要、マイナンバーカードで現在できること、将来できるようになることを確認しておきたいところです。
時事問題が問われるのは教養試験だけではありません。「面接試験」では「最近関心を持った世の中のできごと」を聞かれたり、「集団討論」や「作文試験」では課題そのものが時事問題への対応であったりするケースも少なくありません。過去の試験で聞かれた質問や出題された課題と2022年度出題が予想されるテーマをご紹介いたします。
【面接試験】
警視庁警察官Ⅲ類 2021年
デジタル庁について
1.担当大臣の名前は知っていますか?
2.デジタル庁のトップに就任したのは誰か知っていますか?
※警視庁警察官では毎年3~4問、時事問題の知識を問う質問があります。
国家一般職 2021年
・あなたが考える今後の日本における労働問題とは何か。
・IoTや5Gをどのように活用するか。
【集団討論】
熊本市(学校事務) 2021年
・本市では、進学や就職による市外・県外への転出により、生産年齢人口の減少が課題となっている。若い世代の流出を抑制するため、本市としてどのような取組が必要か、グループで話し合い、意見をまとめなさい。
【作文試験】
北海道警察 2021年
・インターネット上での誹謗中傷が社会問題となっていますが、あなたが考えることを自由に書きなさい。
このように、人物試験や作文試験では時事の知識に加えて、その問題に対する意見が求められるため、知識をインプットするだけでなく、時事問題について自分の考えを書く・話すことを積み重ねていくことが必要です。2022年度の試験では、例えば「成年年齢引き下げにより、保護者の同意なしに賃貸契約やクレジットカード作成などができるようになり、18歳、19歳が消費者トラブルに巻き込まれる可能性も高くなりました。あなた自身が気を付けることを述べなさい。」というテーマが出題されることも予想されます。その他にも上記【頻出分野ベスト3!過去の問題から傾向を押さえよう!】や【2022年度の試験ではここが出る!押さえておきたい時事トピックス】で挙げた時事問題については、自分の意見を言えるように準備しておくとよいでしょう。
今回は過去の頻出分野をもとに、今年の試験で出題が予想される時事問題や押さえておきたい分野をご紹介いたしました。時事対策は公務員試験合格に必要であることをお伝えしていきましたが、実は時事対策の目的は試験合格のためだけではありません。時事問題を知ることで一般常識が身につき、世の中の流れや時代の方向性がある程度読めるようになってきます。さらに、誰もが知っている時事的知識を持っていると、異なる世代や価値観を持った人々とも話ができるようになり、臨機応変かつ柔軟な「対話力」を身につけることができます。この対話力は、公務員だけでなく社会人としてとても大事な力です。この点を踏まえて、生徒様にぜひ時事対策の重要性をご指導いただければと思います。
東京アカデミーは、受講生限定のオリジナル冊子「時事データブック」を毎年作成しています。その年の最新時事問題を項目ごとにコンパクトにまとめたテキストです。時事データブックを使用し、日頃ニュースで耳にする内容とリンクさせながら、最新時事を即座に反映させて授業を行っております。指導方法などでお困りのことがございましたら、ぜひ最寄りの東京アカデミーまでお問い合わせください。
次回は、「作文テーマ予想!近年の作文トレンドはこれだ!」と題し、9月試験に向けて押さえておきたい作文テーマをお届けします。今年5月の警察官試験などで出題されたばかりの最新テーマも取り上げていきます。乞うご期待ください