高校進路ご担当先生・保護者様向け情報
全地方公共団体の自治体1,765の92.6%にあたる1,655の自治体に試験問題を提供している(2017年実績)「公益財団法人日本人事試験研究センター」より、2018年度から地方公務員の統一試験日程である2018年7月22日(B日程)、9月16日(C日程)、10月14日(最終日程)において、試験制度変更の発表がありました。従来の教養試験と共通性が高い教養試験(Standard)、知識より論理的思考力等の知能を重視する教養試験(Logical)、公務員試験に向けた準備をしていない民間企業志望者でも受験しやすい教養試験(Light)の3タイプのレベル別5パターンへ変更となりました。この影響を受けるのは上記の統一試験日程(上記以外の日は従来の教養1~4)のみですので、該当するのは主に全国の市町村・消防組合が対象となります(国家公務員や統一試験日以外の都道府県・政令指定都市は対象外)。※「公益財団法人日本人事試験研究センター」HPもあわせてご確認ください。
公務員試験で本試験問題を公開しているのは国家公務員及び一部自治体(東京都等)のみであり、殆どの地方自治体では原則非公開(試験当日回収)のため本試験問題の入手は難しいのが現状です。しかし、受験対策に過去問の有無は非常に重要な要素となるため、専門予備校である東京アカデミーでは全国32校のネットワークを活かし、受講生(2018年度約3,200名)へ聞き取り調査を行い、非公開の地方自治体の本試験問題の再現を行っております。2013年から2017年(過去5年間)の9月第3週(C日程)に実施された地方自治体の本試験問題の全200題(40題×5年分)の内194題(97%)を再現しています(2017年度は全国約170の地方自治体職種別から情報収集)。2018年度新教養試験(2018年9月16日実施)についても、各タイプ(Standard・Logical・Light)の問題を再現しており、2019年度公務員試験に向けて徹底分析しております。今回は分析内容とあわせて新教養試験の再現問題と出題内容の一部を公開いたしますので生徒様の受験対策指導にご活用いただけると幸いです。
2018年9月16日(C日程)に実施された新教養試験のStandardⅡとLogicalⅡでは、聞き取りによる再現問題から40題中32題が共通問題として出題されていたことが判明しております。出題内容が異なる8問ですが、StandardⅡは主に一般知識(数学・理科)から、LogicalⅡでは主に一般知能(文章理解・数的推理・判断推理・資料解釈)から出題されておりました。
StandardⅡのみに出題された理科について、物理[№16]の直列回路の問題は頻出分野からの出題であり、基本的な考えを問う易しい問題でしたが、化学[№17]の中和反応に関する問題はH⁺およびNA⁺の変化をグラフから選択する、難易度の高い問題であり、こういったパターンは今まであまり出題されていないと思われます。また、この問題は2017年度の大卒程度(警察官)試験で類似問題が出題されており、大卒程度の基礎レベルの学力が必要な問題と言えます。生物[№20]の森林バイオーム分布の問題ですが、難易度は易しくなく日本における森林のバイオームと生育地域を把握していなければ解けない問題でした。但し、2018年9月16日(C日程)の2週間前(9月2日)に実施された、国家一般・税務職採用試験の生物[№24]で類似問題が出題されていたため、国家・税務を併願していた受験生は地方自治体(C日程)の本試験では得点できたのではないでしょうか(国家は本試験問題冊子の持ち帰り可能で翌日正答が発表されるため復習ができる)。地学に関する出題が2018年度はありませんでしたが新教養試験導入初年度のため、この点については来年(2019年)以降の動向を注視しなければなりません。
出題問題数の多い重要科目である一般知能については、StandardⅡが従来(2017年度まで)同様、判断推理・数的推理が各4題、空間把握が3~4題、資料解釈が2題、LogicalⅡは各分野でプラス1~2題という構成でしたが、難易度については従来(2017年度まで)と比べても大きな変化は見られませんでした。よって、これまでと同様の対策でいいかと思われます。但し、LogicalⅡについては、数的推理・資料解釈といった、計算スピードの違いによって得点が大きく変わる分野の問題が増えているので、これまで以上にスピードを重視し、特に、単純かつ基本的な計算のスピードを上げる必要性が高まっていると考えられます。
2018年度に初導入された新教養試験で従来の公務員試験とは全く異なるタイプであるLightの出題内容ですが、公務員試験に向けた準備をしていない方でも受験しやすいレベルの問題との事前案内通り、従来の公務員試験と比較すると論理的な思考力を問う(一般知能)は解きやすい問題であり、社会への関心は時事問題を中心に構成されていました。しかし、問題の難易度と全60題75分(1題あたり1分15秒)という厳しい時間設定が妥当であったかというと、難しく感じた受験生が多かったのではないでしょうか。誰でも短時間で解ける問題のレベルではなく、特に論理的な思考力を問う問題である一般知能(数的推理)のような計算が必要な分野において、いわゆる「速解法」の習得が必要不可欠であったと言えます。その根拠として2018年9月16日実施のLightの再現問題より以下2題の例を挙げます。
以上の2題だけでも、速解法を使うか使わないかで1分から3分の差がつくと思われます。そして、これだけ時間設定の厳しい試験ではこの差は非常に大きいのではないでしょうか。60題75分という試験全体からみれば大差が付いてしまう(全問解き終わらない)可能性すらあります。新教養試験全般で、今後ますますこの様な速解法の重要性は高まっていくのではないでしょうか。しかし、これを使いこなしていくには、試験日のかなり前(理想は1年から半年前)から、なぜこのような考え方ができるのかという根本原理を十分に理解し、実際に過去問や傾向に即した良問を繰り返し解くことが必要となります。受験生が効率よく習得できるよう東京アカデミーでは様々な講座(通学部・短期講習・通信)を行っております。まずは、全国32校で実施している公務員説明会にご参加いただければ、効率の良い学習方法などについてお話しいたします。詳しい日程等は各校HPにてご確認ください。
近年の試験全般についても言えることですが、時事問題の出題数が増加しています。StandardⅡ、LogicalⅡでは、政治・経済・社会の9~10題のうち5題が、Lightでは24題のうちの約半数が、近年の変更された制度、経済関係のデータ、政治状況の変化などを基にした時事問題とも言えるようなものになっています。これについては、従来から使われてきた受験対策用の参考書にある一般的教養知識だけではカバーしきれない所もあるのは否めないので、日頃から関心を持って新聞やニュースなどに目を通し、不明なところがあれば調べていくといった、日常的な積み重ねも必要になるのではないでしょうか。
ただ、勘違いしてはならない点が一つあります。時事問題が増えたからと言って、これまで使ってきた参考書等が全く役に立たなくなった、使う参考書を今までとは違うものに変えなければならない、という訳では決してないという点であります。
例えば、今年Lightで出題された近年の日本のマイナス金利政策について問う問題がありました。これについては、いくら時事対策用の参考書を読んだとしても、そもそも金融政策とは何なのか、金融政策にはどのような手段・効果があるのか、といった、従来型の参考書にある基本的な内容を理解していなければ、時事対策用の参考書に書かれている内容は全く理解できないはずです。よって、従来の学習の内容を根本的に改めるのではなく、新しく学習すべきものが「上乗せされた」と考えるのが妥当でしょう。また、公務員試験の時事問題では、採用後に関係のある事項が多く問われる傾向があります。一例を挙げると、少子高齢化社会(出生率や高齢化率の具体的な数字がメイン)、国際関係(地域紛争やアメリカ情勢等)、IT関連用語、環境問題(諸条約の内容等)、日本の世界遺産登録地、地方公共団体の制度や近年の課題、各地の産業等などが多く出題されております。
東京アカデミーでは全国32校において、受験生へ本試験問題の聞き取り調査による再現だけでなく、各地方自治体の出題タイプ(Standard・Logical・Light)情報も収集しています。一例として2018年7月22日(B日程)、9月16日(C日程)、10月14日(最終日程)に実施された鹿児島県内の地方自治体(高卒程度)について、新教養試験の出題タイプの情報を記載いたします(調査方法は受講生や地方自治体への聞き取りとなります)。もちろん、2019年度以降に各地方自治体の本試験で2018年度と同じタイプが出題されるとは限りませんが、こういった情報を積み重ねることで各出題タイプの特徴を加味した対策も可能となります。
東京アカデミーでは地方初級の本試験問題の再現について、上記日程(9月16日・10月14日)の地方自治体以外にも9月第3週に実施される都道府県警察官(高卒程度)採用試験や9月第4週(又は最終週)に実施される都道府県及び政令指定都市(消防含む)の採用試験も全国32校で精力的に行い、毎年受講生(受験生)への聞き取り調査によって、本試験問題及び出題内容を再現しています。
2018年9月16日に実施された都道府県警察官(高卒程度)試験の出題内容を同日実施の地方自治体の新教養試験(StandardⅡ・LogicalⅡ)と比較すると都道府県警察官(高卒程度)試験で出題された50題中40題(80%)は新教養試験と同じ問題で構成されていることが判明しています。都道府県警察官(高卒程度)試験のみに出題された10題は新教養試験では出題分野から外れた芸術・国語・古文が5題を占めていました。2018年9月23日に実施された都道府県及び政令指定都市(消防含む)は試験制度に変更なく、従来(2017年度まで)同様の試験形式(試験傾向含む)で実施されておりました。以上の点より地方初級の公務員試験を受験(併願)される場合は、新教養試験の導入に伴う出題内容の変更はあるものの、受験対策の大きな方向性に変更はなく、公務員試験合格に近道はないため、高校1・2年生からコツコツと必要な知識を積み重ねるしかありません。
東京アカデミーの高い合格実績(2017年度最終合格実人数3,169名)を支えるのは講義力にあります。下記①~④の過程を経ているからこそできる高い合格実績であり、専門予備校の使命である受講生を合格に導くための条件でもあります。これは東京アカデミーでしかできないことだと自信を持って言えます。
試験情報・教材及び模試・ベテラン講師陣が三位一体となった「講義力」は2018年度新教養試験(Standard・Logical・Light)の再現問題を分析することによって、2019年度はさらに強化いたします。
2018年度の新教養試験の再現問題、出題内容一覧や各地方自治体の出題タイプなどの詳細については、お近くの校舎までお問い合わせください。
時代の流れと同じく、大学入試同様に公務員試験についても試験制度や試験傾向は変化していきます。特に2018年度は統一試験日程の地方自治体の試験制度に変更があり、今年地方公務員を受験された生徒様は限られた事前情報のみで対策するしか方法がなく、不安を抱えたまま試験当日を迎えたのではないでしょうか?また、ご指導されている先生方も大学入試や民間就職対策と同時進行されている状況かと存じます。東京アカデミーは全国の試験情報収集から得たノウハウを活かした試験対策で高校現役生の全学年を対象として様々なサポートをしております。公務員試験についてお困りの点や疑問な点がありましたらお近くの校舎までお気軽にお問い合わせください。
次回の記事は、【現役高校生の合格ノート】を掲載いたします。公務員試験において現役合格を掴んだ先輩の合格ノートはあらゆる面で役立つことは間違いありません。生徒様の指導にぜひお役立てください。